経営・戦略

2026.03.27 03:47

DEIは終わった──すべての労働者のための職場改革へ

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専門職における人種・ジェンダー不平等を研究する学者として、私は黒人労働者と彼らがこうした職場で直面する問題について多くの時間をかけて調べている。彼らの課題は、明白なもの(ステレオタイプ化、差別、キャリアのはしごを上がりにくいこと)から、見えにくいもの(他の黒人社員からの孤立、雇用主や企業からの疎外感、職場の内外での過度な負担)まで幅広い。こうした問題を研究するキャリアを重ねる中で、黒人労働者が直面する障壁や課題の一部に対処し得る政策についても、私は多く考えてきた。最近、American Sociological Reviewに掲載した論文で、私は記している。近年の形で展開されてきた多くのダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)政策は、一般に想像されるほど有効ではなかった、ということを。

DEIの欠点

職場における人種・ジェンダー格差を幅広く研究する人物が、DEIは機能していなかったと結論づけるのは衝撃的に見えるかもしれない。だが、企業のリーダーシップに関するデータと数字は、いくつかの不都合な疑問を突きつける。DEIは数十億ドル規模の産業であり、つい最近まで、さまざまな業界のリーダーから広範な支持を得ていた。2020年当時、多くの企業が制度的な人種差別の終結に向けた支援と資源の投入を公然と誓い、資金の振り向け、組織との新たな連携、より人種的に平等な社会を実現するために講じる具体策について、壮大な約束を掲げた。しかしわずか6年後、テック、教育、医療など多くの業界の上位層に目を向けると、依然として非常に均質で、白人男性が主導的な地位を占めている。

なぜこのようなことが起きたのか。業界ごとに、包摂、機会、そしてより広くDEIへのコミットメントを声高に、熱烈に宣言してきたにもかかわらずである。まず有益なのは、DEIがどのように誤って特徴づけられてきたかを見ることだ。反対派はしばしば、DEIは資格のないマイノリティに、得てもいないし得るに値しない仕事へのアクセスを与え、その結果として品質や成果、企業目標を損なうのだと示唆する。こうした見立てのもとでは、2023年のオハイオ州の列車脱線事故、2024年のフランシス・スコット・キー橋の崩落、2025年のロサンゼルスの山火事といった悲劇も、公共部門の資源低下や公共安全を高める規制構造の弱体化、気候変動への対処に関する集合的コミットメントの後退といったより複雑な要因ではなく、DEIのせいにされ得る。火災、事故、橋の崩落までDEIのせいにできるような、あらゆる問題の「悪役」としてDEIが定着すると、圧力がかかった際に企業がそれを手放すのは、より容易になるだろう。

さらに、そもそも企業がDEIをどのように取り入れていたのかを考えることも有益である。公民権運動後の法的・規制的枠組みに関する組織分析の1つは、多くの企業が「象徴的な順守(symbolic compliance)」に従事していたことを示した。平易に言えば、これは企業が多様性やアファーマティブ・アクションをめぐる新たなルールや規制に従うために必要なことは行った、という意味である。だが、それらの成果を必ず実現するような政策を整備したわけではなかった。したがって企業は、DEIの装置が法に従っており法的措置から自社を守ると示しつつ、DEI施策そのものはほとんど何も達成していない、ということが起こり得た。加えてDEIに関しては、多くの企業が機能するものではなく、人気のあることを行う。これにより、必須のダイバーシティ研修やバイアス研修が重視される理由も説明できる。これらの手法は、上位層における過小代表の労働者の人数を増やすうえでの有効性が限定的であるにもかかわらず、である。企業が法的措置を回避することは確実でも、それ以上はほとんど達成しない形でDEIを組み込んでいるのなら、こうしたプログラムが容易に放棄される仕組みと理由は理解しやすい。

何が変わり得るのか

この研究で私は、職場政策の次の流れにおいてDEIの代わりになり得るものは何かを考えようとしている。そして、ほとんどの業界の上位層における多様な代表性を生み出すという点に関して、DEIがその成果を達成していないことは明らかである、という現実に明確かつ正面から向き合おうとしている。だが、仕事、組織、政策に対して別のアプローチを取ることで、多様性を高めるだけでなく、すべての労働者にとって仕事をより良くできるとしたらどうだろうか。

多くの労働者にとって、雇用は緊張を強いられ、消耗し、意欲を削ぎ、場合によっては有害ですらあるものになっていることが分かっている。人々はより多く働くようになったが、生産性の向上による恩恵を得ることはめったにない。高賃金の稼ぎ手は燃え尽き、過重労働、雇用不安を訴える。一方、低賃金の稼ぎ手は、予測不能なシフトによる絶え間ない入れ替わり、健康保険、育児、その他生活必需の支払いに苦しむこと、そしてその板挟みから生じる不可能な選択について語る。しかし、有給休暇、より短い労働週、団体交渉への支援強化といった政策が、これらの問題の緩和に役立ち得ることも分かっている。過小代表の労働者が直面する固有の問題に対処するために設計された公共政策と併せて、こうした解決策を実施するとしたらどうだろうか。

それを実行するには、働き方のあり方を広範に見直す必要がある。だが同時に、幅広い層の労働者にとって利益となる形で仕事を再設計することでもある。私の研究は主として、専門職において黒人労働者が直面する課題に焦点を当ててきた。しかし、あらゆる人種の女性、他の有色人種の集団、退役軍人、LGBTQ、ニューロダイバージェントの労働者もまた、現代の職場環境において偏見、差別、排除の問題に直面している。これらの労働者の経験を考慮に入れた政策は、こうした集団を職場から押し出したり周縁化したりしかねない「見えない偏り」を相殺する助けになる。そして企業がこの認識を出発点として据えると、多くの労働者が遭遇する具体的障害に対処する余地が生まれる。その方向での一歩としては、雇用機会均等委員会(EEOC)への資金拠出、請負労働者を含むよう反差別法を拡張すること、労働者のクロストレーニング、柔軟なスケジューリングの機会をすべての人に提供することなどが考えられる。

こうした取り組みは、幅広い労働者層に、仕事をより安定的に、安全に、尊厳あるものにし、報われるものにする保護を提供する。DEIは終わったのかもしれない。だが企業と政策立案者は、この局面を活用して、すべての労働者にとってより良い環境をつくることができる。

forbes.com 原文

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