ホルムズ海峡の封鎖はたんなる地域問題ではない。それは世界的なチョークポイント(要所)をめぐる問題であり、西側が断固とした行動をとれるかの試金石にもなっている。ドナルド・トランプ米大統領は北大西洋条約機構(NATO)の支援は必要ないと言い張っているが、動かしがたい事実がひとつある。この狭い海峡を世界の石油のおよそ20%が通過しているという事実だ。
実際にホルムズ海峡が封鎖されると、その影響は即座に表れた。エネルギー価格は急騰し、サプライチェーン(供給網)は逼迫し始めた。政情不安は中東から欧州、アジアへ、さらには米国にも広がる公算が大きい。
現実を直視しよう。ホルムズ海峡は早急に再開されなければならない。そして、トランプが認めようが認めまいが、米国は支援を必要としている。一方で、ほかのNATO諸国は、ウクライナでの戦争への対処に苦労している。この戦争もまた、おびただしい死者を出し、世界に影響を及ぼしている重大な紛争だ。
ホルムズ海峡とウクライナ、この2つを結びつけた「取引」は追求するに値する。
行動しないことの代償
何もしなければどうなるかというのは、もはや理論上の話ではない。その結果はすでに現実に表れつつある。
中東の紛争が続くなか、世界の食料やエネルギーの供給体制は圧迫され、きしみ始めている。国連の世界食糧計画(WFP)のカール・スカウ副事務局長は先週、厳しい警告を発した。
「中東の紛争が6月まで続けば、物価の高騰で新たに4500万人が深刻な飢餓に追いやられるおそれがあります」
人道上の懸念だけではない。これは地政学的にも懸念される事態だ。
食料不安は移住や移民を生む。移住や移民は政情不安を招く。そうした不安は選挙、同盟・パートナー関係、安全保障の優先順位に影響を与える。これはとくに欧州に当てはまるが、米国でも同様だ。
ホルムズ海峡の危機は、放置すれば湾岸地域を越えて広がる。影響は経済、政治、戦略にも波及していく。
同様の懸念は、ロシアのウクライナ侵攻をめぐっても持ち上がる。ロシアが勝利すれば、ウクライナから国外に逃れる国民は2000万人規模に達する可能性があり、深刻な人道危機になると予見されている。



