いくつかのリスクと、それよりもっと危険なこと
もちろん、リスクは存在する。
湾岸地域のエスカレーションは現実的な懸念であり、多国籍部隊の調整は例によって複雑だ。また、米国側でも欧州側でも政治的な抵抗は避けられない。
とはいえ、もっと危険なのは何もしないことである。
ホルムズ海峡の混乱が長引けば、世界経済にショックを引き起こしかねない。ウクライナへの支援が失われれば、ロシアのみならず、ほかの国々による新たな侵略を助長するおそれがある。
歴史を振り返れば、こうしたパターンは実際に認められる。1930年代の欧州が教えているのは、侵略を放置すればそれは拡大していくということだ。
西側同盟を再構築するチャンス
ここには、さらに深い次元の好機も潜む。
この提案は、時代遅れの前提ではなく現在の政治的現実を反映した条件のもとで、米国を西側同盟内に位置づけ直す契機になり得る。
協力を義務ではなく「取引」と捉えることで、伝統的な同盟関係に疑いが持たれるようになっている政治環境でも、協力は実行可能なものになる。
いわば、同盟政治の現代化である。
そして、それこそまさに、いま必要とされていることかもしれない。
まとめ
ホルムズ海峡はたんなる航路ではない。それは世界経済の圧力点でもある。
ウクライナもまた、たんなる戦場ではない。21世紀において、武力による国境の書き換えが可能なのかが試される場にもなっている。
これら2つの危機を別々に扱えば、どちらも一段と悪化するおそれがある。
だがそれらを一体的に扱えば、たとえ限定的ではあっても、戦略上のバランスを再調整する機会になる。
ホルムズ海峡の安全確保をNATOとして支援する見返りに、米国はウクライナへの支援を強化する。そうすれば、西側は2つの緊急課題に同時に対処できることになる。
これを「ささやかな提案」と呼ぶこともできるだろう。
しかし、エネルギーショック、飢餓の蔓延、地政学的な不安定さなど、無為無策による代償が大きくなる世界では、小さくとも実際的な解決策こそ、残された唯一の選択肢かもしれない。
ホルムズ海峡の安全確保への支援と、ウクライナへの支援の交換。この取引は、少なくとも、現実に正面から向かい合う取り組みという点では評価されるべきものである。


