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2026.03.27 12:30

カタール攻撃で天然ガス市場が前代未聞の危機に 石油市場より問題は深刻

カタール北部の工業都市ラスラファン。2019年06月21日撮影(Monique Jaques/Getty Images)

カタール北部の工業都市ラスラファン。2019年06月21日撮影(Monique Jaques/Getty Images)

イランは18~19日にかけて、世界最大の液化天然ガス(LNG)生産・輸出拠点のあるカタール北部の工業都市ラスラファンをミサイルで攻撃した。これにより、複数のLNG関連施設で火災が発生した。国営カタール・エナジーは、先のドローン(無人機)攻撃で同施設群は既に機能不全に陥っていたが、今回のミサイル攻撃で被害が拡大したと説明した。

これに先立ち、イスラエル軍はイランのガス田「サウスパース」を攻撃していた。イスラエルがイランの天然ガス資産を標的としたのは初めてのことだった。今や、世界のエネルギー事情は根本的に変化してしまった。

現在の中東情勢に関する報道は、あまりにも範囲が狭すぎる。誰もが原油価格に注目しているが、より重大で長期的な影響が及んでいるのは世界のLNG市場だ。ロシアによるウクライナ侵攻と同様、中東でもガス施設が戦争の武器と化している。だが、ガスに関しては、世界には戦略備蓄も、緊急用備蓄も、即効性のある解決策もない。今後、数週間から数カ月にわたって発生する問題は、石油の単位ではなく、暖房や電力、肥料の単位で測られることになり、その影響は全世界に及ぶだろう。

米イスラエル両軍が先月28日にイランに攻撃を仕掛ける以前、世界の天然ガス価格は比較的安定していた。ところが、カタール・エナジーが今月2日、最初の無人機攻撃を受けてLNG生産を停止すると、わずか1週間で価格はほぼ2倍に跳ね上がった。英調査会社ウッド・マッケンジーのミアオル・フアンによると、アジアのLNGスポット価格はその後、百万英国熱量単位(BTU)当たり20ドル前後まで急騰した。これは現在の米国の標準価格の5倍に相当する。ラスラファンへのミサイル攻撃後、数時間のうちにガソリン価格は欧州で24%、英国では23%急騰した。

こうした混乱が重なり、今月だけで約580万トンのLNGが国際市場から消失した。これは、世界に供給される予定だった量の約14%に相当する。米イスラエルの攻撃を受けて以降、イランはペルシャ湾に位置するエネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡を事実上、封鎖している。船舶の動きをリアルタイムで追跡するベルギーの調査会社ケプラーによると、数十隻のタンカーが現在、沖合で足止めされ、ペルシャ湾への出入りができない状況にある。

英調査会社ボルテクサのフロレンス・ユーは、「LNG市場には余剰供給能力がないため、同市場への影響は即座に及び、甚大な規模になるだろう」との見方を示した。世界中で取引されるLNGの20%、特にカタールのLNG輸出の90%がホルムズ海峡を通過している。カタールが世界のLNG供給量の20%を占めていることを考えると、この数字は無視できない。

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翻訳・編集=安藤清香

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