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2026.03.30 09:15

クローンマウス58世代目で途絶える 山梨大学が20年で突き止めた繁殖の限界

写真はAI生成によるイメージ(stock.adobe.com)

写真はAI生成によるイメージ(stock.adobe.com)

体細胞の核を埋め込んだ卵子を仮親の子宮に移植して産まれた子ども、いわゆるクローン動物は、まったく同じ遺伝子を持つ子がいつまでもどんどん産まれるものと思われていたが、じつは繁殖に限界があることが、20年間にわたる研究の末に判明した。

山梨大学と放射線影響研究所は、1匹のマウスから作ったクローンマウスの細胞を使ってさらにクローンマウスを作るという「再クローニング」を2005年から20年間続けたところ、とうとう58世代目で再クローニングが不可能になり、途絶えてしまった。

再クローニングでは、まったく同じ遺伝子を持つクローンマウスが代々生まれるわけで、再生医療などのほか、たとえば優れた家畜の遺伝子を永遠に残すといった産業的な期待も大きい。しかし、それほど上手い話はないという結論が出た。

産まれたクローンマウスは健康で、寿命も一般のマウスと変わらず、どこにも異常がないように見えたのだが、オスとメスの自然交配で産まれた通常のマウスに比べて、遺伝子の突然変異が3〜4倍も多いことがわかった。クローンなので、その突然変異もすべて次の世代に受け継がれてしまう。それがどんどん累積され、やがて、正常な子どもが産まれなくなるということだ。

実験では、3〜4カ月ごとに再クローニングを実施した。クローンが生まれる成功率は、最初は7.4パーセントと低かったが、26世代目には15.5パーセントとピークに達した。ところがそれを境に成功率は減っていった。20世代目までは1回の出産で10匹ほど産まれていたが、その数も次第に減り、50世代目ではわずか数匹しか産まれなくなった。やがて、58世代目にはとうとう、わずかに産まれた子どもも数日で死んでしまった。

横軸は世代、「FC」は核細胞を採取した元のマウス。「仔」が再クローンマウス同士が自然交配した結果。
横軸は世代、「FC」は核細胞を採取した元のマウス。「仔」が再クローンマウス同士が自然交配した結果。

突然変異を抱えても、56世代目まではそれなりに健康だったが、57世代目では突然変異した遺伝子がさらに突然変異を起こす有害変異が見つかった。それにより、58世代目ではクローンマウスが生存できる閾値を超えてしまったというのだ。ちなみに、こうした突然変異は、その後に自然交配を行えば修正されるそうだ。

山梨大学では、地球上の生命の遺伝子を月面で保存する「遺伝資源の宇宙保存」プロジェクトを提唱しているが、そうした分野にも今回の実験結果は影響を与えそうだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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