米トランプ政権によって全米の空港に派遣された移民・税関捜査局(ICE)の捜査官らは、空港警備に必要な訓練を受けていないと批判を浴びているにもかかわらず、しっかり給与を受け取っている。一方、空港の保安検査を従来担っている米運輸保安局(TSA)の職員には、1カ月以上もの間、給与が支払われていない。
米政府の求人ポータルサイトに掲載された求人情報によると、ICE職員の基本給(年俸)は約5万2000~8万4000ドル(約830万~1340万円)で、地域や経験によって変動する。
米国では与野党の対立で国土安全保障省(DHS)の予算が成立せず、政府機関の一部閉鎖が続く中、DHS所管の部署であるTSAの職員が無給で空港業務に従事する事態となっている。だが、同じくDHS傘下のICE捜査官は現在も給与を受け取れている。
これはICE職員の給与が、昨年成立した予算調整措置法「ひとつの大きく美しい法(One Big Beautiful Bill:OBBB)」を通じてICEに割り当てられた750億ドルの上積み予算から支払われているためだ。同法により、ICEは連邦法執行機関の中でも最も資金力のある機関となった。
ICEは以前、この巨額の資金増額を利用して大量採用を実施した。その際、契約条件として基本給に加え、学生ローンの免除、残業手当、充実した退職金制度、最高5万ドル(約800万円)の契約時ボーナスを提示している。
これに対し、TSA職員の給与は相対的に低いようだ。DHS報道官が米メディアのビジネスインサイダーに語ったところによれば、年俸は約4万ドル(約640万円)からで、経験を積むにつれて6万~7万5000ドル(約960万~1200万円)程度が平均年収になるという。
空港に配備されたICE捜査官の給与額についてコメントを求められたDHSのローレン・ビス広報担当次官補は、報酬の詳細を明かさず、政府機関閉鎖の責任は民主党にあると非難した。
空港職員はICEの派遣に「げんなり」
匿名を条件にフォーブスの取材に応じた空港職員は、「無資格のDHS職員が給与を受け取りながら空港内を闊歩していることに、TSA職員はげんなりしている。私たちは有資格の仕事を無給でこなしているのに」と語った。
米連邦職員でつくる最大の労働組合である米公務員連盟(AFGE)のエベレット・ケリー会長は、「航空保安の訓練を受けておらず資格も持たない」ICE捜査官を派遣しながら、TSA職員への給与支払いが滞っている現状を強く非難。「(TSA職員は)保安検査所で発見されないよう特別に設計された爆発物や武器、脅威を検知する方法を何カ月もかけて学んでいる。専門的な指導、実習、継続的な更新を求められるスキルだ。その場しのぎで対応できるものではない」と述べた。



