多くの人が知っているように、旅行は物事の見方を変えてくれる。だが、それは単に新しい視点を得る以上の意味を持つ。Looking Glass Therapy Services(ルッキング・グラス・セラピー・サービシーズ)の創業者で心理療法士でもある認定臨床ソーシャルワーカーのアリス・マクギンは「旅行は新しい経験をもたらし、それが脳の再編成能力を活性化させ、ドーパミンを増やす」と話す。
「こうした変化によって脳内に新たな神経結合が生まれ、私たちが本来持っている適応力や調整力、そして再び喜びを見い出す力が引き出される」とも語る。さらに、旅行はストレスのパターンを中断させるため、非常に困難な時期でもストレス反応状態に完全に陥っているときには得られない明晰さを得る余地を生み出すと説明する。
旅行はうつ症状の軽減に役立つ
米カリフォルニアを拠点とする関係療法士のカレン・スチュワート博士は「旅行は喜びを取り戻し、うつ症状を軽減するのに役立つ」と話す。人生で困難な時期にあるとき、私たちの心は動揺し、抑制されることがあり、結果としてうつや不安の症状が増すことがあるとスチュワートは説明する。
人は自分の人生が絶え間ない闘争・逃走モードにあるかのように感じることがある。特に忙しい時期や困難な時期に旅行をすることで、日常のルーティンから解放され、人生全体を異なる視点で見ることができるようになり、たとえ今が理想的な状況でなくても、前向きな体験が今後あることを思い出させてくれるとスチュワートは指摘する。「旅行を計画すること自体も、悩みの多い生活の不安から心を一時的に解放してくれる。旅行を空想するだけでもエンドルフィンが分泌され、ポジティブな感情が呼び起こされるため、セロトニンの増加にもつながる」とも説明する。
行き詰まりを感じたり、進むべき道が見えなくなったように感じたとき、環境を変えることで思考を整理しやすくなり、うつのような感覚がいくらか和らぐことが多い。それは、私たちが常に変化し続ける存在であり、現在の状況もいずれ変わることを思い出させてくれる。
旅行では新しい役割を試せる
普段、あなたは親、夫、従業員、あるいは介護する人かもしれない。そうした役割に圧倒されているとき、旅行は一息つく余裕を与えてくれる。Phoenix Men’s Counseling(フェニックス・メンズ・カウンセリング)の創業者ジェイソン・フィアスタインは「旅行をしているときはそうした役割から解放される。探求したり、新しいことに挑戦したりするための自由と余裕が生まれ、そうすることで喜びがもたらされる」と話す。特に一人旅では自分と自分のニーズに注意を向ける機会が得られる。
旅行で有害な循環を断ち切ることができる
ストレスの多い時期には、精神的なエネルギーを消耗させ、反応的な状態から抜け出せなくさせる、騒がしく耳障りで、差し迫ったストレス要因に囚われてしまいがちだ。瞑想アプリHeadspace(ヘッドスペース)のシニアセラピーマネージャーであるジョイ・パリッシュは「旅行は心身のパターンを中断する働きを持つ」と説明する。「危機が渦巻く環境から身を引くことで、単に危機を乗り切るだけでなく、変化の根底にある感情を処理するために必要な心の余裕が生まれる。それによって短期的な危機管理から、長期的なビジョンへと視点を切り替えられる」と話す。



