脳には「運のフィルター」があり、再訓練できる
神経科学は、ある人が機会に巡り合い、別の人がそれを見過ごす理由のメカニズムを提示する。脳幹にある神経ネットワークで、注意と覚醒を司る網様体賦活系は、脳が毎秒受け取る約1100万ビットの感覚情報をふるいにかけ、意識に入る「関連情報」は100ビット未満にとどめるフィルターとして働く。何がそのフィルターを通過し、何が「関連する」と見なされるかは、期待、情動状態、認知的柔軟性に大きく左右される。
良いことが起きると期待しているとき、脳の注意システムは周辺的なシグナル、新奇なパターン、予想外の結びつきに対してより受容的になる。これらはまさに、私たちが「幸運な転機」として経験する刺激である。仕事のオファーにつながる立ち聞きした会話、ビジネスの着想を生む記事、パートナーシップへと発展する偶然の出会い。逆に、不安やストレスが強い、あるいは単一の目標に狭く集中していると、フィルターは締まり、目の前に存在する機会が文字どおり意識の処理に到達しなくなる。
Scientific Reportsに掲載された2025年の研究は、この見取り図に重要なニュアンスを加えた。441人の参加者を調べた研究者たちは、「自分は個人的に恵まれている」という感覚(個人的な運の良さ)が、認知的ウェルビーイングと情動的ウェルビーイングの両方と正の相関を示すことを見いだした。一方で、運を外部の力として一般化して信じることは、認知的ウェルビーイングと負の関連を示した。
この違いはプロフェッショナルにとって極めて重要だ。良い結果は自分に向かってやって来やすいと信じることは、健全でパフォーマンスを高め、根拠もある。だが「運」という目に見えない力がすべてを支配していると信じることは、高品質な意思決定を支える主体性の感覚を損なう可能性がある。
運にまつわる迷信を扱った別の研究では、たとえばゴルフのパットの前に「あなたにはラッキーボールがある」と告げられるといった単純な儀式でさえ、自己効力感と課題への粘り強さを高め、パフォーマンスを測定可能な形で向上させうることが示されている。ある実験では、幸運の手がかりでプライミングされた参加者はパットの65%を成功させたのに対し、対照群は48%だった。そのメカニズムは魔法ではなく自信だ。運が良いと感じることで人はより努力し、より粘り強くなる。それが結果として成果を押し上げた。


