還暦のご褒美は?
小山:撮影は少人数ですか。
山口:「LISTEN.」の始まりがハンガリーだったので、ブダペストのカメラマンたちと5人ほどのチームで撮影を続けました。ハンガリーは東から西へと向かった騎馬民族のルーツをもち、音楽家のバルトークやコダーイが農村を巡り庶民のなかに生きる音楽を録音し、膨大な記録を残した国。撮影センスも西洋と東洋、両方の良さをもっていて、とても刺激になります。
小山:「LISTEN.」では、10年間で約30カ国を旅したわけですよね。「LISTEN. ONE MOMENT」は15分くらいの短編ですが、もっと長編が見たいと思いました。
山口:実のところ、30分バージョンを計画していたのですが、会場のルールで椅子が置けないなど諸々の制約があって、泣く泣く短いバージョンに。本当はヨギボーとか置いて、ぐだぐだにリラックスして音に浸っていただきたかったんだけど。
小山:それはいいですよね。
山口:でもいざオープンしてみたら、皆さん、床に座って、長時間滞在してくださって...。嬉しかったなあ。もし第二弾に続くなら、次回は10年分の映像素材をふんだんに盛り込んだ、見応えのあるものにバージョンアップさせたい。一期一会の場に集う人々と共に、変幻自在に「LISTEN.」を進化させたいです。
小山:いやー、ますますお元気で頼もしい。僕たち同年生まれで、還暦を過ぎましたが、残り時間とかは考えませんか。
山口:還暦のご褒美は、地球滞在時間に限りがあることを、リアルに感じられることですよね。だからこそ「今、この一瞬」が、いかにかけがえのないものであるか、実感できる。歳を重ねるって、すごく楽しいことだなと思います。
今月の一皿
山口さんの好物はヨーグルトとのことで、ヨーグルトに似たフロマージュブランをベースにしたメランジェサラダを。

blank

都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。
山口智子◎1964年生まれ。1988年NHK連続テレビ小説で俳優の道へ。世界の音楽文化を巡り映像ライブラリーに収めるプロジェクト「LISTEN.」を発信。横浜・山下埠頭の「THE MOVEUM YOKOHAMA」にて、「LISTEN.」新シリーズを開催中。
小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務めた。


