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2026.04.10 13:30

「東大京大だけじゃない」地方ディープテックの潜在力

また、22年からの「スタートアップ育成5か年計画」でもディープテックは重点分野に位置付けられ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で1000億円規模の支援基金が設けられたほか、創薬・宇宙関連にも大型予算がつくなど、起業前から実用化フェーズまでの横断的な支援が整い、資金供給量は従前と桁違いの厚みを見せている。

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事業化までの時間軸が長いディープテックは、研究開発や設備投資に多額の資金が求められ、民間だけでは支えきれない面があった。国の支援によって、資金面の見通しを立てやすくなった影響は大きい。「大学の研究者や学生たちの間では、社会実装に対するモチベーションが明らかに高まっている」とインキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介は言う。

ただし、すべてが順調なわけではない。地方ならではの課題も顕在化している。典型例が経営人材不足だ。ディープテックでは、「事業化のプロ」として事業会社やコンサルティング会社で経験を積んだ人材が研究者とタッグを組み、経営チームを組成するのが一般的。首都圏ではVCがカンパニークリエーションの一環として研究者と経営人材をつなぐ取り組みを積極的に行っているが、「東京ですら経営者候補は少ない状況で、地方ではその成り手が圧倒的に不足している」とANRIジェネラル・パートナーの鮫島昌弘は話す。結果的に、創業したはよいものの、研究者目線でのやり方にこだわり過ぎていたり、事業戦略が描けず推進力を欠いていたりするケースは少なくない。

アカデミア連携という新トレンド

一方で、最近ではこうした課題を打破する新たな動きも見られるようになってきた。そのひとつが、複数の大学や研究機関が連携し、共同でスタートアップを設立するというものだ。例えば、ANRIなどが出資する、レーザー核融合炉の実現を目指すEX-Fusionは光産業創成大学院大学と大阪大学、中性原子を用いた量子コンピューターを開発するYaqumoは京都大学と分子科学研究所がタッグを組んで生まれた。

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ひとつの研究室の成果にこだわるのではなく、お互いの技術をうまく組み合わせてロールアップを行い、社会実装に近づけるという座組だ。「単独で創業する場合、後になって類似領域の研究室発のディープテックと競合する可能性があるが、最初から連携して創業すれば、市場を総取りすることができる。米著名VCのフラッグシップ・パイオニアリングなどは、この手法で戦略的にカンパニークリエーションに取り組んでおり、今後、日本でもトレンドになっていくのではないか」とBeyond Next Ventures代表取締役社長の伊藤毅は話す。

また、組織構築にあたっては、首都圏に拠点を設けてCxOクラスや営業、バックオフィス部門の人材を採用し、地方の本拠では研究開発や生産に専念するなど、機能を切り分ける動きも顕著だ。近年はオンラインでビジネスが回る仕組みが普及し、多拠点でもうまくワークするようになってきた。

次頁からは、地方の大学・研究機関発でキラリと光る会社をピックアップした。このなかから社会実装の成功例が生まれ、地域に新たな産業が形成されていく未来を期待したい。

文=眞鍋 武 イラストレーション=ムティ

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