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2026.04.10 13:30

「東大京大だけじゃない」地方ディープテックの潜在力

全国各地に、世界を変えうる技術シーズが眠っているのではないか──。期待高まるディープテックは、横の広がりから高さを追求する段階に移行しつつある。


日本経済の未来を切り開く起爆剤として注目されている研究開発型のディープテック・スタートアップ。技術を強みに、グローバル市場で勝負できるという期待から、政府やベンチャーキャピタル(VC)による支援が活発化している。特に近年、顕著なのがその裾野の広がりだ。

経済産業省の調査によると、2024年度の国内大学発ベンチャー企業数は5074社。前年から786社増えており、増加ペースは年々加速している。資金調達も堅調だ。25年の国内スタートアップ資金調達総額は前年を割れ込み、投資家による選別の厳しさが増しているなか、研究開発型スタートアップの調達額はほぼ横ばいの3433億円(スピーダ調べ)。全体に占める割合も45%と、存在感は高まっている。

興味深いのが、大学別の調達額だ。東京大学をはじめ旧帝大クラスの大学発スタートアップが多額の調達をしている状況はここ数年、大きく変わらない。ただ、25年は全体調達額が落ち込み、主要大学もほとんど減少するなか、「その他」が前年比29%増の706億円と拡大。これは、地方の大学や研究機関が社会実装へ挑む動きが明確に広がっていることを表している。

「アカデミアの世界では、東大や京大だけが最先端の研究をしているということはまったくない。優れた技術であるかは、学部の偏差値に依存せず、その先の研究室で決まるもの。その意味で、地方にはこれから大きな可能性がある」とUntroD Capital Japan代表取締役社長・永田暁彦は話す。また、東京大学エッジキャピタルパートナーズ取締役パートナーの宇佐美篤は、「北海道は宇宙、東北は半導体や素材、関西圏はライフサイエンスなど、地域で強みをもつ領域が分かれている。結果として、当社でも東大発以外の技術シーズに投資する割合が増えてきている」と言う。

こうした裾野拡大の背景にあるのが、政府による強固な後押しだ。内閣府は2020年にスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成を掲げ、24年度までの第1期は8都市、25年度からの第2期では13都市を選定し、拠点都市に対しディープテック企業の創出を支援してきた。特に効果的だったのがギャップファンドだ。大学や研究機関の基礎研究と、その事業化の間にある資金の空白、いわゆる「死の谷」を埋めるための支援金で、文部科学省の旗振りのもと科学技術振興機構(JST)を通じて1000億円規模の資金を供給。内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の和仁裕之は、「各拠点都市が掲げた創出数などのKPIはおおむね達成してきた。

今後5年間は、裾野の広がりだけなく、資金調達額やユニコーン創出数などの『高さ』を追求していく」と話す。例えば、半導体・デジタル分野でのグローバルなスタートアップ創出を掲げる熊本など、第2期は地域の産業構造やリソースを生かした拠点づくりを進めている。「地域の特色をよりシャープに打ち出していくことで、海外からの投資も呼び込みたい」と和仁は意欲を見せる。

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文=眞鍋 武 イラストレーション=ムティ

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