輸送コストの高騰は経済全体に波及し、食料品から工業製品に至るまで、あらゆる物価を押し上げるだろう。今回の事態は、ジョー・バイデン前大統領の政権下で米政府報道官が「一時的」な要因のせいにすることが慣例化していた「根強いインフレ」とは異なる。消費者がマイカーに給油したり、公共料金の請求書を確認したりするたびに実感せざるをえない、真の供給主導型のショックだ。
EIRの分析が正しければ、このショックは数週間や数カ月間では収まらず、何年にもわたって米国や世界経済に影響を及ぼすことになる。
影響を食い止める手段は乏しい
全米自動車協会(AAA)の報告によると、米ガソリン小売価格は直近1カ月間ですでに1ドル値上がりした。新たな原油価格水準はまだ小売価格に完全には反映されていないため、今後数日間でガソリンはさらに急騰すると予想される。石油・エネルギー価格の低下を通じたインフレ抑制を掲げるトランプ政権の戦略には、大打撃となる。
クリス・ライト米エネルギー長官は3月23日、ヒューストンで開幕したエネルギー業界の年次国際会議「CERAWeek(セラウィーク)」で、消費者への影響を緩和するために政府が活用できる手段はまだ残っていると演説した。しかし、米大統領が世界の原油市場に有意義な影響を与えられる方法はかなり限定され、主要な手段である米国の戦略石油備蓄の放出はすでに着手済みだ。
市場に最も大きな影響を与えうるのは、イラン紛争の早期解決とホルムズ海峡の再開を通じて今回の「ブラックスワン事象」に終止符を打つことだろう。しかし、EIRがはっきり指摘しているように、たとえそれが成ったとしても、原油価格の見通しが2月28日以前に支配的だった「長期にわたる低価格」にただちに戻ることはない。
1バレル=100ドル台で高止まりする原油価格はすでに現実のものとなった。そして、新たな「高止まりの長期化」という市場のシナリオは、今後しばらく続く可能性が高い。


