されば、優れた人物との縁を得たとき、謙虚に愚直に大切なことを学ぶ人間と、小成に安んじて慢心し何も学ばない人間とでは、まったく違った歩みになってしまうことも、人生の厳しい真実であろう。
そして、業務時間に、優れた上司や先輩から、会議力、企画力、営業力、プロジェクト・マネジメント力などの「汎用技能」(プロフェッショナル力)を学ぶことは、実は、これからのAI時代においては「死活」の問題になってくる。なぜなら、AI時代には、「専門資格業(士業)の半分は失業する」と言われるように、ただ専門知識を学び資格を取っただけでは、AIに簡単に淘汰されてしまうからであり、優れたプロフェッショナルから「汎用技能」を実践体験的・身体的に学ぶことこそが、AI時代の自己投資の戦略として、極めて重要になるのである。
そして、これからのAI時代に最も重要になる「汎用技能」は、「マネジメント力」である。
ただし、世の中には、マネジメントとは「部下に仕事を振って、自分が楽をすること」であると勘違いをしている問題上司も多いが、こうした人材は、第二の人生の入り口で、その安易な心の姿勢と能力の低さを見抜かれ、確実に淘汰されてしまう。
逆に、AIに決して置き換えることのできないマネジメント人材、すなわち優れた上司とは、1. 部下が仕事に「働き甲斐」を感じることができる上司、2. 部下の職業人・人間としての成長を支えることができる上司、3. 共感に満ちた職場を創り、協働作業が円滑に進む組織を創れる上司であり、この「三つの力」が発揮できる人材に他ならない。
しかし、こう述べると、若手人材の中には、「自分は、まだ、部下の立場なので、マネジメントの勉強はできない」と思われる人がいるかもしれない。
だが、そうではない。実は、自身が部下のとき、様々な上司の姿から学んだこと、特に、問題上司を「反面教師」として苦労しながら学んだことが、いつか自身がマネジメントの立場になったとき、大きな糧となっていることに気がつくだろう。
田坂広志◎東京大学卒業。工学博士。米国バテル記念研究所研究員、日本総合研究所取締役を経て、現在、 21世紀アカデメイア学長。多摩大学大学院名誉教授。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議元メンバー。 元内閣官房参与。全国から1万名を超える経営者が集う田坂塾・塾長。著書は 『人類の未来を語る』 『教養を磨く』 など、国内・海外で150冊余。tasaka@hiroshitasaka.jp


