自己理解と余白が、共創の土台をつくる
デザインパートナーと出会い、いきなり「さあ、共創しましょう」と言っても上手くはいきません。共創の前に不可欠なのが、ものづくり企業側の「気持ちの整理」と「下準備」です。
長年、BtoBの部品加工や下請けを担ってきた企業にとって、自社の技術力やものづくりの良さが「一般の人にとって伝わりやすい言葉」になっているケースは稀です。彼らにとっての「当たり前」は、世間にとっての「驚き」であるにもかかわらず、その翻訳がなされていないのです。
そこで私たちは、いきなりマッチングを行うのではなく、まずは企業が自己理解を深めるためのワークショップを実施しました。独自のヒアリング項目を設定し、経営者や職人たちと徹底的に対話を重ねます。ここで重要なのは、他社に負けない圧倒的な技術力や強みだけでなく、自社の「弱い部分」や「泥臭い苦労」も含めて丸裸にすることです。弱さや課題を開示することこそが、外部のパートナーが関わるための「余白」となるからです。
さらに、ヒアリングした内容は単なるメモで終わらせず、プロの目線で「記事化」し、言語化しました。自分たちの歴史や想いが一つのストーリーとして可視化されることで、企業側は客観的に自社の価値を再認識し、気持ちの整理をつけることができます。同時に、「そもそも何をめざしてものづくりをするのか」「このプロジェクトを通じて何を達成したいのか」というゴール設定を徹底的に行いました。羅針盤なき協業は、単なる「外注」に成り下がってしまうからです。
こうした入念な下準備を経て初めて、私たちはまちこうばとデザインパートナーをマッチングするフェーズへと移行しました。ここで強く意識したのは、単なる下請けや発注の関係ではなく、お互いの個性を消さずに混ぜ合わせる「和える(あえる)」関係性の構築です。
そのために私たちは、まずものづくり企業の熱量やパーパスを直接デザイナーに届ける「MEET UP」イベントを開催し、血の通った出会いを演出しました。そして、その想いに呼応する形で、デザインパートナーが具現化に向けたアイデアを提案する「オープンコンペ形式」を採用したのです。スキルや予算といった条件闘争ではなく、ビジョンへの共鳴から始まる「相思相愛の関係づくり」を意図的に設計しました。
マッチング後は、デザイナーと職人が共にフィールドリサーチへ出向きました。現場の空気や機械の匂い、職人の手さばきを共有しながら、お互いに「本当に作りたいものは何か」「表現したいものは何か」を徹底的に言語化し、具現化していくプロセスを共に歩んだのです。そこには、ガチガチに固められた仕様書ではなく、双方が自分事として関われる「余白」がありました。この余白こそが、単なる「協業」を「共創」へと昇華させる重要な装置となります。


