起業家

2026.03.30 15:00

AIを本物の医師にしたい──65歳の連続起業家がFDA承認に挑む理由

連続起業家のマーティン・バルサフスキー(Photo by Kevin Dietsch/Getty Images)

診察の予約が取れなかった経験がきっかけとなり、AIドクターを構想

バルサフスキーがCertumaの構想を思いついたのは、マイアミのセカンドハウスに滞在していた際に皮膚のトラブルに見舞われたことがきっかけだった。「自分に何が必要かは分かっていたが、診察の予約が取れなかった」と彼は語る。

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その後、彼は常に対応が可能な新しいタイプの医師をAIで実現できないかという考えに取りつかれるようになった。2025年後半、この構想を8VCのロンズデールに提案し、同社のヘルスケア部門責任者セバスチャン・カリリと2時間にわたって議論を交わした。「マーティンに会ったとき、テクノロジーに対する考え方が一致しているだけでなく、この技術を社会に導入するために必要な規制当局との対話にも精通している人物だとすぐに分かった」と、パランティアのヘルスチームを経て8VCに加わったカリリは語る。「私たちは、FDAの承認に向けた道筋を自分たちで切り開いていく必要がある」。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の医学部長、AIが医師になることへ高い基準を求める

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の医学部長であり、AIが医療をどう変えるかをテーマにした新著を持つロバート・ワクターは、初期診療の危機を解決するためにAI医師は必要だとしつつも、その役割には厳しい基準が求められると指摘する。

「どこまでを任せるのか、その境界を見極めることが重要だ。AIがリピトールを継続して処方できることを証明するのと、AIが医師そのものになることの間には大きな隔たりがある」と彼は言う。頭痛や喉の痛みといった一見単純な症状であっても、AIが適切に見極めて対応すべき例外的なケースが存在する。「喉の痛みの患者の中には、咽頭がんの診断に至るケースが紛れている」と彼は指摘する。「頭痛の患者を何百人も診ていく中で、その中に髄膜炎の患者が含まれていることもある」。

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ヒポクラテスの誓いに従うため、決定論的な第2の安全レイヤーを組み込む

バルサフスキーは、AIが膨大なデータを統合できる能力によって、将来的には人間の医師よりも良い治療結果をもたらすようになると考えている。ただし現時点では、AIは患者にとって危険になり得る形で誤った回答を生成することがある。「AIは、かなり優秀になっているが、承認を得るにはまだ不十分だ。そして私たちはそれを承認まで持っていかなければならない」と彼は語る。「ヒポクラテスの誓いは『害をなすな』だ。私は、その原則に従うAIを作りたい」。

この方針を具体化するため、Certumaは複数の大規模言語モデル(LLM)を組み合わせたAIに、第2の安全レイヤーを組み込んでいる。この仕組みは生成AIではなく、臨床データに基づく明確なルールを適用する決定論的なシステムで、リスクの兆候を検出し、不明確な点があれば即興的な判断を避けるよう設計されている。初期段階では、AIの判断はすべて患者に提示する前に資格を持つ医師が確認する。将来的には、医師は複雑または判断が難しいケースにのみ対応し、AIがより自律的に機能する体制を目指す。

特に初期診療へのアクセスが限られている人々にとっては、副鼻腔炎や結膜炎といった軽度の症状への対応をAIに任せられれば、理論上は健康状態の改善につながり、医療システムへの負担も軽減される可能性がある。バルサフスキーはまた、言語の壁によって十分な医療を受けられていないヒスパニック系の患者など、従来の医療体制で見過ごされがちだった人々にも役立つと考えている。

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翻訳=上田裕資

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