起業家

2026.03.30 15:00

AIを本物の医師にしたい──65歳の連続起業家がFDA承認に挑む理由

連続起業家のマーティン・バルサフスキー(Photo by Kevin Dietsch/Getty Images)

通信・バイオテクノロジー・不妊治療分野で財を築く

バルサフスキーは、AIドクターに取り組む以前に通信、バイオテクノロジー、不妊治療分野で財を築いた。フォーブスは2016年、Prelude Fertilityの草創期を特集記事「End of the Biological Clock」で報じている。同社は、彼が第7子を授かった時期に立ち上げた、7社目の企業だ。

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「起業家になりたかった。資本主義の世界で、何かを作り上げる人間になりたかった」

バルサフスキーはブエノスアイレスで生まれた。父親は天体物理学者であり研究者だった。リベラルなユダヤ系家庭で育った彼は、ビジネスに関心を持っていたことから「家族の中では少し浮いた存在だった」と振り返る。1970年代にいとこがアルゼンチン軍に殺害されたことをきっかけに、10代のバルサフスキーは家族とともに米国へ移住した。コロンビア大学の大学院在学中には、ニューヨークのソーホー地区で工業用ビルを住宅用ロフトに転用する事業を立ち上げ、これが最初の起業となった。1991年に彼は、海外通話が非常に高額だった時代に低価格の国際通話サービスを提供する通信会社Viatelを創業した。「私は起業家になりたかった。資本主義の世界で、何かを作り上げる人間になりたかった」と彼は語る。

1995年にマドリードへ移住した後も、彼は複数の通信企業を立ち上げた。そのうちの1つのスペインのブロードバンド事業者Jazztelは、2014年に44億ドル(約6996億円)でOrangeに買収された。ただし、すべてが成功したわけではない。バルサフスキーが「完全に失敗だった」と語る欧州のクラウドコンピューティング企業Einsteinetは、彼に約5000万ドル(約80億円)の損失をもたらしたという。

Prelude創業当時の経験が、北米最大級の不妊治療クリニックのネットワークにつながる

2015年のPrelude創業当時、バルサフスキーと妻ニーナは、共に子どもの授かりに苦心していた。彼はその経験から、規模が大きいものの小規模事業者が乱立する不妊治療業界に変革の余地があると気づいた。リー・エクイティ・パートナーズの出資を受けたPreludeは、2016年には推定売上高3500万ドル(約56億円)で黒字化を達成した。Preludeは2019年、Inception Fertilityと統合し、北米最大級の不妊治療クリニックのネットワークとなった。現在では83都市に2300人の従業員を抱えている。

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彼が当初構想した、若い女性に卵子凍結を促し、自らの人生をコントロールする手段として訴求するビジネスモデルは、現在では主流になっている。彼はその後も、不妊治療関連で2社を立ち上げている。胚培養ラボの自動化に取り組むOverture Lifeと、3日間の体外受精を手がけるスタートアップのGametoだ。

現在、バルサフスキーがCEOを務めているのはCertumaのみだ。「3年か4年に1度、これはと思うビジネスのアイデアが浮かぶと、頭から離れなくなる」と彼は語る。「私はこの仕事をするためにこの世にいる。アイデアを会社にすることが好きなんだ。それが私の人生の使命だ」。

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翻訳=上田裕資

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