ブルーギルのオスの戦略から見えてくる大きな教訓
ブルーギルのオスがメスに擬態するのは、動物行動学におけるより広いパターンの一つだ。『Philosophical Transactions of the Royal Society B』に掲載された2013年の研究で指摘されているように、「代替繁殖戦術」と呼ばれている。こうした多様な戦術は、昆虫から爬虫類、鳥類、哺乳類まで実にさまざまな分類群で見られる。研究が進んでいる例として、いくつか例を挙げよう(これだけではない):
・コウイカのオス:優位なオスをやり過ごすために体色を変える。
・シリアゲムシのオス:交尾相手を確保するために、メスにプレゼントを渡す(婚姻贈呈と言われる行動)。
・縄張りを持たないオスの鳥:メスの行動をまねて巣に近づく。
こうした戦略が発達するのは、受精の成功という意味で得られた繁殖の成果が、防衛、攻撃、競争にかかるコストと釣り合った時だ。
ブルーギルが研究対象としてとりわけ有益なのは、その多様な交配行動を、野生の個体群で容易に観察でき、かつ厳密なフィールド調査で数値化されているからだ。そのためブルーギルは、交配戦術の進化を解明する上でのモデル系となっている。
ブルーギルのオスがメスに擬態する生態が存続しているという事実は、性選択と競争がいかに複雑な行動パターンを作り上げていくかを浮き彫りにしている。また、唯一無二の「ベストな」繁殖戦略など存在しないことも教えてくれる。1つの個体群内で複数の戦略が共存することは可能だ。そして、そうした戦略はそれぞれ、特定の環境ならびに社会的な背景に適応している。
こうした多様な交配戦術は、進化生物学における重要な原則、すなわち、適応度は状況に依存するということを明示している。ある状況下では、大型かつ攻撃的なオスに効果的な戦術が、別の状況下にいる、体格が小さくてさほど支配的でないオスにも有効とは限らない。自然選択は、姿かたちだけでなく、行動の柔軟性でも働く。
ブルーギルの場合は最終的に、流動的な交配様式が生まれた。つまり、縄張りを守ること、こそこそと行動すること、メスに擬態することがそれぞれ、次世代に遺伝子を伝える上で役割を担っている。保護オスは自分のテリトリーを守り、スニーカー型オスは受精させるためにすばやく卵に駆けつけ、サテライト型オスはメスのふりをして巣に紛れ込む。
それぞれが、繁殖の成功につながるやり方であり、生命はいずれにせよ、遺伝子を次世代へと伝えるための手段を必ず見つけ出すのだということを思い出させてくれる──たとえそれが、ほかの誰かのふりをしなくてはならないとしても。


