暗号資産

2026.03.27 15:00

顧客はなぜ動かないのか──暗号資産に学ぶ、休眠ユーザーを動かす報酬設計の原則

Juan Alejandro Bernal / Shutterstock.com

英プレミアム・ボンドが70年間実証してきた賞金連動型の設計を、ステーキングの報酬構造に応用

金融業界は、この問題に対する1つの確かな解決策をすでに見つけている。それが「賞金連動型貯蓄」だ。英国のPremium Bond(プレミアム・ボンド、国債の一種)は70年にわたり、シンプルな原理で運用されてきた。すべての口座保有者にわずかな確定利息を分配するのではなく、その利息をプールして賞金として再分配する仕組みである。期待値は同一だ。しかし、心理的な体験はまったく異なる。少額の残高でも「参加に意味がある」と感じられるため、預金者は関心を持ち続ける。

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このモデルが今、ブロックチェーンインフラにも応用され始めている。レバレッジ(借入による投資倍率の拡大)やカストディリスク(資産管理上のリスク)、複雑さを加えることなく、一般ユーザー層に本物の関与を生み出すよう報酬分配を再設計した、新しいカテゴリーのステーキング商品が登場しつつある。基盤となる仕組みは変わらない。変わるのはインセンティブの設計である。

元本を守りながら戻る理由を作る、そのループこそがフラットな利回り構造に欠けていた

シュテファンは、この設計がもたらす行動の変化をこう説明する。「少額から始めた人が、元本が守られていることを確認し、また戻ってくる理由を見いだす。この循環こそ、固定利回り型の仕組みでは決して生まれなかったものです」。

ブロックチェーンに限らず、受動的なユーザーを抱えるあらゆる産業の設計課題

Solanaにおける休眠ウォレットの問題は、受動的なユーザーを能動的な参加者に転換しようとするあらゆるビジネスにとって有用なケーススタディである。この教訓はブロックチェーンに限定されない。

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プロダクトの報酬設計が、入口段階の小さな関与に対して、はっきりした心理的な見返りを与えられないと、ユーザーは行動を一段進めない。離脱するか、受け身のままでいるか、あるいは、しばしばより高いリスクを伴う、より刺激の強い代替手段へ移っていく。

このパターンこそが、2021年から2025年にかけて個人投資家をミームコイン(ネットの流行やジョークをテーマにした投機的な暗号資産)やレバレッジ型金融商品に向かわせた原動力である。消費者を預金口座ではなく宝くじに向かわせるのも同じ力だ。ジムの会員権が使われず放置され、ポイントプログラムが顧みられないのも同じ構造である。

求められているのは、人間の行動心理に合わせた報酬構造の設計

解決策がより良いプロダクトであることは稀だ。必要なのはより良いインセンティブ設計──金融モデルが想定する「こう行動すべき」ではなく、人間が実際にどう反応するかに基づいて設計された報酬構造──である。

関与できるはずのユーザーと実際に関与しているユーザーのギャップを埋めたいすべてのプラットフォームにとって、それこそが本当の設計上の課題だ。

Solanaの休眠ウォレットは、その課題が誰の目にも見える形で現れた最新の事例にすぎない。

(forbes.com 原文)

翻訳=酒匂寛

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