注目すべきは、DeepSeekの台頭がまさに、アップルの優位を裏づけている点だ。理由は本稿の冒頭で述べたとおりだ。
AIの躍進は目覚ましく、今後もそうあり続けるだろう。だが同時に、AIはいま私たちの目の前でコモディティ(汎用品)になりつつある。誰もがAIを必要とする一方で、提供コストは日ごとに下がっていく。となれば、高性能で低コストなAIはDeepSeekで打ち止めにはならないだろう。そうした世界で、アップルは人々がAIを手に入れるための主要な入口であり続ける。急速に変わる時代を生き抜くうえで不可欠なAIへの入口として。先に触れたウォール・ストリート・ジャーナルの報道が示すように、この立ち位置だけでも十分に、そして今後ますます大きな収益源となる。
知性と能力において驚異的なAIが次々と生まれている現状について、ピーター・ティールは著書『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』の中で「戦争はコストのかかるビジネスだ」と書いている。言い換えれば、AIがもたらす真の富は、コモディティ化が進む領域での消耗戦からは生まれない。コモディティ化したAIが必然的に切り拓く、新たな商業的飛躍から生まれるのだ。石油を例にとろう。化石燃料そのものがもたらした変革は計り知れないが、最大の富を生んだのは、石油が人間の重労働を肩代わりしたことで初めて可能になった産業の飛躍だった。
筆者の見立てはこうだ。いまの形のAIは、石油と同じ役割を、しかしそれよりはるかに大きな規模で果たすことになる。アップルは、どのAIが「選ばれる存在」になるかをめぐる競争から利益を得ると同時に、AIが自動化する不可欠でコモディティ化された仕事からも、莫大な恩恵を受けるだろう。


