先月28日に米国とイスラエルが開始した軍事作戦の展開を世界中の指導者が見守る中、イランと複雑な関係にある2カ国は、この事態を特に注意深く観察している。それは、ロシアとアゼルバイジャンだ。
イランの核開発を阻止し、弾道ミサイル計画を抑制することを目的とした米国主導の作戦に対し、イランはペルシャ湾に面するほぼすべての近隣諸国に加え、北方のアゼルバイジャンやトルコまでも攻撃するという形で応酬した。イランのドローン(無人機)が今月5日、アゼルバイジャンのナヒチェバン空港と学校を攻撃し、民間人に負傷者が出たことで、同国は衝撃に包まれた。これを受け、アゼルバイジャンは直ちにイラン駐在の外交官を召還し、軍に最高レベルの警戒態勢を命じた。トルコに関しては、北大西洋条約機構(NATO)の防衛システムが13日、イランから同国に向けて発射された3発目のミサイルを迎撃した。トルコはイランに対し、説明を求めている。
イランによるホルムズ海峡封鎖継続の脅威に対し、国際社会は強い危機感を抱いており、米国のドナルド・トランプ政権は原油価格の急騰に対する懸念を和らげるための措置を講じている。こうした措置には、高騰する原油価格とインフレを抑制するため、「既に海上にある」ロシア産原油に対する制裁を一時的に解除することも含まれている。トランプ大統領は、世界的な原油価格の高騰と30日間の制裁解除によってロシアが得る一時的な金銭的利益は、イランへの軍事作戦を成功させるための比較的短期的な代償だと判断したようだ。他方で、トランプ大統領は、ロシアがイランを支援している可能性が高いとみている。
イラン情勢を巡るロシアの状況
2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以降、ロシアはイランから調達した攻撃用無人機や短距離弾道ミサイルに大きく依存している。
米国とイスラエルによるイランへの攻撃をきっかけとした原油価格の急騰により、ロシアは短期的に恩恵を受けているかもしれないが、長期的にはこの状況は、同国がイラン製の防衛装備品を引き続き入手できるかどうかを左右するだろう。ロシアとイランは先月、5億ドル(約790億円)規模の武器取引で合意した。だが、この合意も今や危うい状況にあるかもしれない。
それでもなお、イランを巡る情勢の混乱により、ロシアはエネルギー輸出から収入を得ることになり、その結果、経済が活性化し、ウクライナに対する消耗戦を長期にわたって継続できるようになる可能性が高い。他方で、ロシアがウクライナ侵攻に注力している間、南カフカス地方に及ぼす影響力は弱まるものとみられる。
アゼルバイジャンとイランの緊張関係
最近の中東情勢の展開により、アゼルバイジャンとイランの間で長年続いている緊張が沸点に近づきつつある。アゼルバイジャンが寛容で世俗的なシーア派が多数派の共和国であるという事実は長きにわたり、精神指導の必要性を主張するイランの最高指導者に対する反論となってきた。さらに、イランは、アゼルバイジャンがイスラエルと長年にわたり築いてきた安全保障とエネルギー分野での協力関係にかねてより不満を抱いているほか、自国領内に住むアゼルバイジャン系住民の間でナショナリズムが高まる可能性についても常に懸念を抱いてきた。多民族国家のイランで、アゼルバイジャン人は最大の少数民族であり、人口の5分の1から3分の1を占めている。



