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2026.03.24 07:00

イラン攻撃で南カフカス地方での影響力を増す米国

アゼルバイジャンの首都バクーで会談した同国のイルハム・アリエフ大統領(右)と米国のJ・D・バンス副大統領。2026年2月10日撮影(Kevin Lamarque - Pool/Getty Images)

今月5日の無人機攻撃だけでも両国間の緊張を高めるには十分だったが、アゼルバイジャンの治安当局は同日、国内で「テロ行為」を計画していたとして、イラン革命防衛隊と関係のある工作員数人を拘束した。これにより、戦略的に重要なバクー・トビリシ・ジェイハン石油パイプラインの破壊工作や、在アゼルバイジャン・イスラエル大使館、ユダヤ教指導者、シナゴーグへの攻撃計画を阻止した。

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こうした緊張が高まる中、アゼルバイジャンは、最近までロシアとイランが支配的だった南カフカス地方以外の国々との関係強化を図っている。昨年8月8日、トランプ大統領の招きで米ホワイトハウスを訪問したアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領とアルメニアのニコル・パシニャン首相が和平に向けた共同宣言に署名したことで、大きな進展が見られた。この時、米国が主導する「国際平和と繁栄に向けたトランプ回廊」計画も発表された。これは、アゼルバイジャンと同国の飛び地ナヒチェバンを結ぶとともに、ロシアとイランを迂回(うかい)してトルコ、ひいては欧州へと通じる貿易ルートを開拓する構想だ。先月には米国のJ・D・バンス副大統領がアゼルバイジャンでアリエフ大統領と会談し、両国のエネルギー、安全保障、貿易関係に関する協定を結んだ。米シンクタンク、ハドソン研究所は、バンス副大統領の訪問は、米国がカフカス地方での影響力を強めるとともに、同地域におけるロシアとイランの役割を弱体化させようとしていることを示唆していると指摘した。

しかし、アゼルバイジャンに対する米国の防衛支援は、依然として1992年の自由支援法第907条の影に隠れている。同条項は、米国のジョージ・W・ブッシュ元大統領、ジョー・バイデン前大統領、トランプ大統領によって適用が除外されてきたにもかかわらず、現在も有効な法律として残っている。昨年8月に結ばれたアルメニアとアゼルバイジャンの和平合意に反対しているアルメニア系米国人の草の根組織、米アルメニア国民委員会(ANCA)は長年にわたり、アゼルバイジャンに対するこうした制限措置の維持を支持してきた。この法律が廃止されれば、米国はアゼルバイジャンへの直接的な防衛支援を拡大することができ、それによってカフカス地方におけるロシアとイランの影響力が弱まることになるだろう。

エネルギー分野に関しては、アゼルバイジャンはこれまで、数百万ドル相当の天然ガスをイランに輸出してきた。イラン側はまた、アゼルバイジャンと同国を経由してロシアとペルシャ湾を結ぶ計画中の貿易ルートである「国際南北輸送回廊」にも関心を示している。だが、今月初めの一連の出来事を受け、アゼルバイジャンが経済・エネルギー分野でイランと今後どのような関係を築いていくのか、あるいは関係を継続するのかどうかさえも危うい状況にある。アリエフ大統領は、米国、イスラエル、イランを巡る現在の中東情勢の混乱に自国が巻き込まれることを望んでいないと表明した。

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米国とイスラエルによるイランへの攻撃がいつ終わるのか、全く分からない。しかし、戦闘が続く中、地政学の専門家や政策立案者、中東情勢の観測筋は、より広範な地域に注目することになるだろう。その地域は、現在の混乱が収束した後、様変わりする可能性が高い。米国が南カフカス地方での目標を見失わなければ、この重要な地域は、ロシアとイランの支配力を損なう形で米国の影響力が増大する場所の1つとなるだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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