ルール2:常に早起きする
生産性に関する助言の中でも、早起きは特に強い影響力を持っている。アップルの最高経営責任者(CEO)のティム・クックは午前4時前に起床すると言われている。「午前5時起床クラブ」はそれ自体が1つのジャンルになっている。このルールのメッセージは明確だ。「人より早く起きなければ、すでに遅れている」というものだ。
だが、多くの人にとって、この助言は役に立たないどころか、むしろ逆効果になる可能性がある。人には「クロノタイプ」と呼ばれる、生まれつきの睡眠・覚醒の傾向がある。これは心の持ちようの問題ではない。
研究では、典型的な朝型の人もいれば典型的な夜型の人もおり、多くの人はその中間に位置することが示されている。重要なのは、夜型の人に朝型のスケジュールを強制しても、朝型に変わるわけではないということだ。単に、脳が最も作業に適していない時間帯に負荷のかかる仕事をさせられることになる。
専門誌『BMJ Public Health』に2024年に掲載された、成人2万6000人以上のデータを分析した研究では、夜型の人の方が朝型の人よりも多くの指標で認知パフォーマンスが高いことが示された。
さらに専門誌『Chronobiology International』に掲載された研究では、夜型の人は創造的な思考能力が高い傾向があることもわかっている。これは、深夜の比較的静かで邪魔の少ない環境が広がりのある連想的な思考を促すためだと研究者たちは考えている。
過去の事例も無視できない。例えば、フランツ・カフカは保険会社でフルタイムで働きながら、最も知られている小説を午後11時から午前3時の間に執筆していた。現代文学において最も多く分析されている作品の1つである『変身』は一晩で書き上げられた。マルセル・プルーストは、史上最も長い小説の1つである『失われた時を求めて』のほとんどを夜に執筆し、午前中に外出することは稀だった。
同様にノーベル文学賞を受賞したトニ・モリソンも、早朝に執筆することについて率直に語っている。それは文化的な慣習によるものではなく、モリソンにとって早朝が最も都合のいい時間帯だったからだ。モリソンには幼い子どもたちがおり、日中は仕事があったため、唯一確保できる静かな時間が夜明け前だった。
重要なのは「朝が良い」「夜が良い」ということではなく、能力を最も発揮できるピークの時間を守るべきということだ。
クロノタイプは矯正すべき欠点ではない。朝型の人は全体の一部に過ぎない。それ以外の人が午前5時に起床するようにすると自分の生理的特性に逆らうことになり、その摩擦を「鍛錬」と呼ぶことになる。最も生産性の高い時間は午前5時ではなく、脳が機能する準備が整っている時間だ。
生産性の本当のルール
これらの指摘は、いずれも怠惰や野心の欠如を正当化するものではない。極めて有能な人たちは懸命に働いている。彼らを際立たせているのは従うルールの数ではなく、どのルールが自分には当てはまらないものかを見極める自己認識だ。
生産性に価値を置く文化は、極めて個人的な問題に対して普遍的な仕組みを作り上げた。午前5時起床や予定をぎっしり詰め込んだスケジュールは、一部の人や状況においては見事に機能する。だが、無差別に適用すると本来高めるはずの認知的リソースをかえって損なうことになりかねない。
「自分はルールを十分に守っているか」という問いよりも、「どのルールが自分の脳に合っているのか、そしてどのルールが知らず知らずのうちに脳の働きを妨げているか」という問いの方が有益だ。特定の習慣やスケジュールよりも、この区別こそが最も生産的な出発点となるかもしれない。


