映画

2026.03.25 15:15

韓国では誰もが結末を知る悲劇を描いた「王と生きる男」が大ヒットする理由

ソウルにある朝鮮時代の宮殿「昌慶宮」の正殿「明政殿」(Richie Chan - stock.adobe.com)

ソウルにある朝鮮時代の宮殿「昌慶宮」の正殿「明政殿」(Richie Chan - stock.adobe.com)

いま韓国では映画『王と生きる男』が1400万人以上の観客動員数(国内累計)を誇り、現在も記録更新中だ。

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韓国国民なら誰もが結末を知っている「悲劇の王」端宗(タンジョン)の物語を、21世紀の観客の心に直接届くエンターテインメントとして再構築し、パンデミック以降停滞モードにあった韓国の映画市場を一気に覚醒させた。

韓国社会では、映画そのもののヒットを超えて、物語の舞台である寧越(ヨンウォル)への「巡礼」や、歴史と政治をめぐるオンラインでの議論など、複数のレイヤーで社会現象まで生み出している。

コロナ禍以降の観客の映画館回帰

まず「結末を知っている」王の悲劇が、なぜいま史上最大級のヒットになったのか。

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韓国の観客にとって、朝鮮の第6代国王である端宗(1452年〜1455年在位)の悲劇的な最期は、教科書やドラマを通じて広く共有されている既知の歴史だ。にもかかわらず、『王と生きる男』は公開直後から口コミが爆発し、異例のスピードで観客数を伸ばした。

端宗は、わずか11歳で国王に即位し、叔父にあたる首陽大君(後の世祖)によって王位を奪われ、政治闘争の犠牲として若くして命を落とした「悲劇の少年王」である。

この物語は、韓国では既に幾度となく映像化されてきたが、『王と生きる男』では端宗その人ではなく、「王と共に生きることを選んだ1人の男」に焦点を移すことで、歴史的悲劇を現代の倫理と感情の問題として再提示している。

韓国のメディアは、本作を「コロナ禍で打撃を受けた観客の映画館回帰を決定づけた作品」と位置づけているが、興行的成功は数字の話だけにとどまらない。

観客の間では「この映画を見て、端宗の時代といまの韓国が重なって見えた」「歴史の物語なのに、自分たちの話を聞かされているようだった」といった感想が相次いだ。

誰もが知っている結末だからこそ、その手前の時間をどう生きるべきか──タイトルが示す通り、「王と生きる」という行為に観客の視線を誘導する構造が、現代の感性に接続しているのだ。

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文=アン・ヨンヒ

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