映画

2026.03.25 15:15

韓国では誰もが結末を知る悲劇を描いた「王と生きる男」が大ヒットする理由

ソウルにある朝鮮時代の宮殿「昌慶宮」の正殿「明政殿」(Richie Chan - stock.adobe.com)

実はヒットの裏には監督の力が

『王と生きる男』のインパクトは、韓国国内に留まらない。

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北米を中心に海外公開が進むにつれ、韓国での大ヒットを伝えるニュースが現地メディアでも紹介され、興味を集めている。韓国系コミュニティを起点に、「韓国で1000万人以上が観た歴史映画」「端宗という王を知らなくても楽しめるドラマ」として口コミが広がり、ローカルな歴史ものがグローバルな観客の視野にも入ってきている。

海外展開で象徴的なのが、『The King's Warden(王の番人)』と付けられた英題だ。直訳に近い「The Man Who Lives with the King」ではなく、「Warden(番人、看守)」という言葉を選んだことで、作品の焦点が端宗個人の悲劇ではなく、「王と共に生き、王を守ろうとする一人の男」に置かれていることが即座に伝わる。

これは、「歴史の中心人物ではない者の視点から歴史を描く」という本作のスタンスを、文化的背景の異なる観客にも理解しやすくするためのローカライズとも言える。

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また、韓国生まれの「Kコンテンツ」への信頼と期待が既に世界的に醸し出されていることも追い風となっている。

アカデミー賞の作品賞にも輝いたポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(2019年)以降、韓国映画は「社会的メッセージとエンターテインメント性を両立させる作品」としてグローバル市場でのポジションを確立した。『王と生きる男』もまた、「政治と倫理」「歴史と現在」を同時に扱う作品として、その系譜に連なる。

今後、配信プラットフォームへの展開が進めば、韓国と歴史的接点の薄い地域にも端宗の物語が届くことになるだろう。そのとき、この作品は「韓国の歴史映画」としてではなく、「権力と忠誠、個人の生き方を問う普遍的なドラマ」として再解釈される可能性がある。

ローカルな悲劇が、翻訳と配信インフラ、そしてKカルチャーへの信頼を媒介に「グローバルな問い」へと変換されるプロセスは、コンテンツビジネスの観点からも注視すべき動きである。
 
さまざまな側面から映画のヒットの要因と反響を書いてきたが、実はこの映画のヒットの裏には監督の力が潜んでいると筆者は思っている。

『王と生きる男』の監督であるチャン・ハンジュンは、韓国での知名度は高いが、これまで大作には恵まれなかった。彼のあだ名は、「作家キム・ウニの夫」「神様に愛された楽な人生」「涙あとのないマルチーズ」などがあり、どれも彼の陽気で楽観的な性格を表してしている。

こう呼ばれるのは、チャン・ハンジュンが、日本で『シグナル 長期未解決事件捜査班』とリメイクされた韓国ドラマ「シグナル」や「キングダム」などのヒット作を連発する脚本家キム・ウニの夫であり、彼女の稼ぐお金を管理する人でもあることに由来している。

また、監督業よりテレビタレントとしての能力が高く、誰からも愛されるキャラクターでもある。そんな彼がマスコミに頻繁に登場して、今回は自分の映画を宣伝したことも大ヒットに一役買っている。

チャン・ハンジュン監督は、公開当初から「観客数1000万人を超えたらどうしますか?」というインタビューに対し、「電話番号を変え、整形手術を受けて顔を変え、他の国籍に帰化し、ヨットを購入して船上パーティーを開く」と回答した。

そして、すでに1000万人を超えてしまったが、彼の答えをちゃっかり聞いていた人たちは、彼が一体どうするのかに注目しているが、現在のところ「変身して別人になる」様子はまったくない。しかし、それを誰も咎めたりしていない。

文=アン・ヨンヒ

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