原発事故で考えたこと
藤吉:その危機を越えて、次の柱をどう見つけていったのでしょう。
阿部:きっかけは東日本大震災と福島第一原発の事故です。あの事故を見て、一度暴走したら止める手段がない原発にエネルギーを過度に依存するのは間違っていると思いました。そうしたところ民主党政権が再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」を始めるんです。その買い取り価格を見て、自分たちで太陽光発電の施設を作って電力を買い取ってもらえば、十分リターンがあるとわかった。僕は暗算が得意なんです(笑)。最初に熊本県に太陽光発電の施設を作って、そこから再生可能エネルギー事業が始まりました。
藤吉:これが3つめの柱である「実物資産」への投資ですよね。
阿部:そうです。現在では太陽光、風力、バイオマスなどの発電施設と蓄電施設が全国に347カ所あり、全部合わせると原発1基分の70%ぐらいの発電量(国内の再生可能エネルギーの発電量ランキングで4位)になっています。この分野の運用資産残高は2800億円を超えていて、市況に左右されない安定した収益源になっています。
藤吉:最近では北海道で水素を作っているとうかがいました。
阿部:苫小牧に再エネ由来の「グリーン水素」を製造する工場(スパークス苫小牧グリーン水素製造所)を作ったんです。そこで作った水素を使ってくれるお客さんも自分たちで探して、自分たちの手で水素をトレーラーで運んでいます。
藤吉:水素というのは、どういうところで使っているんですか。
阿部:例えばキャンプ場の温泉施設のお湯を沸かしたり、工場のボイラーに使われています。今のところは採算度外視で実験的にやっている段階ですが、僕はいずれ新たなエネルギー源として水素が注目される時代が来ると思っているんです。そのときのために、ちょっとでも水素のことを自分達で知っておきたい、というのが一番の目的ですね。
豊田章男氏と
藤吉:そういう意味では4つめの柱「プライベートエクイティ」(ベンチャー企業投資を目的としたファンドの組成・運用を行う事業)も、未来に関わる投資といえますね。
阿部:これも再エネと同じ頃に始めた事業ですが、当時、世界中の機関投資家の口から一斉に「AI」とか「ロボティクス」といった言葉が出るようになったんです。これは一体何を意味するんだろうと自分なりに考えた結果、〝自動運転の車〟のイメージが浮かんだんです。それでそんな話を、たまたま宿でご一緒していた豊田章男さんとお話ししました。


