「中国で起業し、海外で展開するスタートアップ」モデルが広がりつつある
張は、「中国発で海外で展開するスタートアップ」のモデルケースとして、メタが約20億ドル(約3200億円)で買収を提案したAIスタートアップ「Manus」を挙げる。同社は、中国で創業された後にシンガポールへ拠点を移していた(ただし、Manusをめぐっては、米国VCのBenchmarkによる出資を米規制当局が精査した。また中国当局は、買収に関する規制審査のため、共同創業者2人を出国禁止としたと報じられている)。
張は、「中国国内から真にグローバルな企業を築くのは難しい」と述べている。中国のテックエコシステムは基本的に国内で完結しており、そこで開発されたソフトウェアの多くは国内市場向けにとどまるからだ。
「トップレベルのアスリートは、地元の試合で勝つためだけではなく、オリンピックで戦うことを目指して力を磨いている。AI時代のインフラを構築するテクノロジー企業にとって、シリコンバレーは我々にとってのオリンピックの舞台だ。我々は最高レベルの競争に挑みたい」と張は語る。
この2年で少なくとも100人の中国人起業家が、米国への移転を検討
張は、現在米国への移転を進めている中国人のスタートアップ創業者が、自身の周囲だけでも20人近くいると語る。
かつてアリババでプロダクト責任者を務め、現在はVCのSancus Venturesを創業したレイク・ダイも、この動きはより広範に広がっていると指摘する。この2年間で少なくとも100人の中国人起業家が米国への移住について彼女に相談してきたという。海外資本が中国から距離を置き始めたことでベンチャー投資は減少し、創業者は国外の市場を検討せざるを得なくなっている(なお、ダイはDifyの投資家ではない)。
「中国人の創業者は、現在米国に移りつつある。ここ数年で、その動きは加速している」とダイは語る。
もっとも、誰もがTikTokのような状況を避けたいと考えている。中国企業としての所有構造をめぐる長年の監視の末、TikTokは一時的に米国でサービス停止に追い込まれ、最終的には禁止措置を回避するために米国事業の売却を余儀なくされた。こうした反発を避けるため、多くのスタートアップは創業者が中国出身であることよりも、自社のプロダクトの中身を強調するようにしている。「早い段階でレッテルを貼られたくないからだ」とダイは言う。
中国に開発チームを置き、海外で採用を進めるハイブリッド型の体制
一方、中国生まれのスタートアップにとって、成長戦略をどう描くかは依然として難しい課題だ。Difyは中国発であることを隠していないが、張によればベイエリアや東京で積極的に採用を進める一方、60人規模の中核となるオープンソースのエンジニアチームは依然として中国に置いている。他のスタートアップも同様に、中国に開発の中核を残しつつ、カスタマーサポートや営業などのチームを海外で採用するハイブリッド型の体制を取っている。OpusClipやHeyGenのように、完全に中国国外へ移転した企業もある。


