米国のフィンテック(金融テクノロジー)業界で、企業間の評価格差が急速に拡大している。その背景にあるのが、未上場市場への資金集中だ。新規株式公開(IPO)は有力スタートアップにとって「到達点」などではなく、今や上場を経ずに未上場のまま巨額資金を調達するケースが常態化している。
政府系ファンドや年金基金といった機関投資家が「次のメタやグーグルになりうる企業」を求めて未上場企業に直接投資するようになった結果、AIとの親和性が高いと見なされた一握りのフィンテック企業だけに巨額の資金が流れ込んでいる。決済大手Stripeや法人カード会社Rampがその代表格だが、業界関係者の間では、両社の評価額は「上場すれば到底維持できない水準」との声も上がる。
一方、実際に株式市場へ上場したフィンテック企業の多くは株価が低迷したままで、未上場・上場の間で評価の論理は大きく乖離している。AIバブルがいつかはじけたとき、その歪みは一気に表面化しかねない。はたして、この構造は持続可能なのか。
勝者と敗者を鮮明に分ける、フィンテック業界の評価格差
金融テクノロジー業界は、明確に勝者と敗者に分かれる構図になっている。たとえば、サンフランシスコに拠点を置く決済企業Stripeは、数百万の事業者に対してクレジットカード決済の受け付けやステーブルコイン取引の処理、請求業務の管理といったサービスを提供している。事情に詳しい関係者によれば、同社の2025年の純売上高は69億ドル(約1.1兆円。1ドル=159円換算)で、EBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)は12億ドル(約190.8億円)に達していた。売上高は2024年から30%以上増加した。
評価額約25兆円のStripe、上場時には現在の水準を維持できない可能性
世界トップクラスの規模と成長を誇るStripeの最新の評価額は1590億ドル(約25兆円)に達しており、創業者のコリソン兄弟の純資産は、それぞれ175億ドル(約2.8兆円)と推計されている。同社の評価額は、オランダのフィンテック分野の競合Adyenの時価総額の約5倍に相当する。上場企業であるAdyenの2025年の決済処理額は1兆6000億ドル(約254.4兆円)と、ストライプの1兆9000億ドル(約302.1兆円)と比べて大きな差はない。Stripeの支持者は、同社の事業領域がAdyenより広く、「より大きな基盤の上で高成長を続けている」と主張するだろう。だが、仮に現在Stripeが上場したとしても、1590億ドル(約25兆円)の時価総額を維持できる可能性は低い。
利益でShopifyに大きく劣るStripeが、同水準の評価額
公開市場に目をやれば、ECプラットフォームのShopifyは2025年、Stripeとほぼ同じペースで成長し、利益は2倍以上に達したにもかかわらず、時価総額はStripeの評価額と同水準の1650億ドル(約26.2兆円)にとどまっている。Stripeの広報担当者はコメントを控えた。



