資金が未上場市場に集中、上場フィンテック企業の株価低迷が続く
サンフランシスコに拠点を置く未上場テック企業の評価額を追跡するスタートアップCaplightによると、未上場のフィンテック企業の上位10社の合計評価額は、過去12カ月で164%増加した。一方で、上場フィンテック企業の上位10社の時価総額は、2%の増加にとどまっている。こうした評価の差は、資金の流れが未上場市場へと大きくシフトしている現状を示している。かつては、新興企業にとって新規株式公開(IPO)は企業価値を最大化し、投資家にとっても成果を確定させる「到達点」と見なされていた。
しかし現在では、数千にのぼるプライベートエクイティやベンチャーキャピタルが、公開市場よりも速いペースで拡大する未上場市場での投資案件を巡って競い合っている。こうした状況が、特に人工知能(AI)のような過熱分野において、未上場企業の評価額を押し上げている。
上場後に低迷するフィンテック企業、デジタル銀行Chimeは大幅に下落
最近上場したフィンテック企業の多くは、株価が伸び悩むか下落している。デジタル銀行Chimeは、フィンテックバブルのピークだった2021年に250億ドル(約4兆円)の評価を受けていたが、2025年6月に上場して以降の6カ月間の時価総額は、70億ドル(約1.1兆円)から110億ドル(約1.7兆円)の範囲で推移し、初日の終値で記録した160億ドル(約2.5兆円)を大きく下回っている。ベンチャーキャピタルのF-Prime Capitalのパートナーであるロシオ・ウーによれば、2025年上場した11社のフィンテック企業のうち、IPO価格を上回って取引されているのは3社にとどまっている。
AIをめぐるストーリー作りが、評価額を左右
フィンテック業界の「勝者」の評価額が上昇し続けている背景の1つに、AIをめぐる巧みなストーリー作りがある。StripeやRampは、AIの普及が自社の事業を押し上げると投資家に信じ込ませ、AIエージェントなどAI関連の新機能に関する発表を相次いで打ち出している。
AI戦略を打ち出すKlarnaに対して、公開市場の投資家は懐疑的
ストックホルム拠点の上場企業、後払い決済(BNPL)サービスを手がけるKlarnaも同様の戦略を試みており、共同創業者兼CEOのセバスチャン・シェミアトコフスキは、自社がすでに「セールスフォースの企業向けソフトをAIで置き換えている」とまで発言している。しかし、公開市場の投資家はこうした主張に懐疑的だ。Klarnaの時価総額は現在60億ドル(約9540億円)にとどまり、IPO時の水準や2021年に未上場市場で付けられた460億ドル(約7.3兆円)の評価額から大きく下落している。


