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2026.04.02 16:10

アンソロピックのClaudeが拡大するほど儲かる企業──評価額1.5兆円「Vercel」とは何者か

アルゼンチンの起業家、ギジェルモ・ラウフ(Photo by Stefanie Keenan/Getty Images for for Village Global)

アルゼンチンの起業家、ギジェルモ・ラウフ(Photo by Stefanie Keenan/Getty Images for for Village Global)

ウェブアプリやAIエージェントの「置き場所」を提供するインフラ企業(ホスティング企業)、Vercel(バーセル)が静かに存在感を高めている。ギジェルモ・ラウフが創業した同社の評価額は93億ドル(約1.5兆円、1ドル=158円換算)に達した。これによりラウフはビリオネアとなり、その純資産は少なくとも21億ドル(約3339億円)に達したとフォーブスは推計している。

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Vercelの名は一般に知られていない。だが、アンダーアーマー、ストライプ、Sonosといった世界的ブランドが、自社のデジタルインフラをVercel上で動かしている。Vercelが開発・保守するオープンソースのウェブ開発フレームワーク「Next.js」は、多くの開発者が用いており、AIコーディングアシスタントの学習データにも大量に含まれている。

その結果、AnthropicのAIコーディングツール「Claude Code」でアプリを開発すると、デプロイ先としてVercelが提案されるという構造が生まれた。ゴールドラッシュで儲けたのは金を掘った人ではなく、つるはしを売った人だった──米国の投資家がよく使う「つるはしとシャベル」の論理が、AIブームの中で再現されつつある。

AIが大量のコードを生成する時代、それをホストする基盤を握る者に商機が集まる。ラウフは「この新世代ソフトウェアのインフラ層になることが我々の目標だ」と明かす。

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AIコーディングが急拡大する中、Vercelに追い風が吹く

Anthropic(アンソロピック)は米国時間2025年11月、AIモデル「Claude Opus 4.5」を発表した。Vercelのギジェルモ・ラウフCEOは2026年1月、サンフランシスコ本社で全社ミーティングを開いた。彼はまず、まだ歴史が浅いAIコーディングの重要な出来事をまとめたスライドを提示した。2021年に公開したGitHub Copilot(テクニカルプレビュー版)は、コードの補完すら満足にできなかったが、2022年発表のChatGPT(リサーチプレビュー版)はコーディングを「決定的なユースケース」にした。AnthropicのClaude 3.5 Sonnet(2024年10月アップグレード版)により、AIは小規模なコードを書く場合であれば「明確に信頼できる水準」に達した。

Claude Opus 4.6とClaude Sonnet 4.6が登場、SaaS企業の時価総額が数千億円規模で消失

ラウフは、AnthropicのClaude Opus 4.5が同様の節目になると見ていた。「これは世界にとって大きな転機になる」と彼は社員に語ったという。そして、その予測は現実になりつつある。AIコーディング分野で長く先行してきたClaude Codeは、他社を引き離し始めた。2月冒頭、AnthropicはAIエージェント「Claude Cowork」向けに、数十種類の業務を自動化できるとうたう各種プラグインを公開。2月5日にClaude Opus 4.6、また2月17日Claude Sonnet 4.6が公開されると、「SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の死」と呼ばれる議論が勃発し、SaaS企業の株式から数十億ドル(数千億円)規模の時価総額が消失した。自動化によって、SaaS企業が不要になりかねないと投資家が懸念したためだ。

この動きは株式市場に衝撃を与えたが、Vercelにとっては追い風となる可能性がある。同社は、開発者がウェブアプリやAIエージェントを構築・デプロイ・ホスティングするための基盤を提供している。これはいわばゴールドラッシュで採掘者に道具を売る、古典的な「つるはしとシャベル」型のビジネスだ。AIによって大量のコードが生成される中、それをホストする存在が必要になるからだ。「デプロイのスピードは劇的に加速している。我々は最終的に、この新しいソフトウェア世代のインフラ層になりたい」とラウフは語る。

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翻訳=上田裕資

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