父が購入した1台のPCが、ラウフを世界的な開発者へと導くきっかけに
工業エンジニアの父と化学エンジニアの母のもとに生まれたラウフは、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの南のラヌースで育った。両親は専門性の高い職業に就いていたものの、コンピューターにはあまり詳しくなかった。それでも先見の明を持つ父は、ラウフが7歳のときに家庭用PCを購入した。家族で初めて大学教育を受けた父は、自分が大学で学んだ工学の仕組みや手法が、デジタル化の進展によっていずれ時代遅れになると見抜いていた。「私が学んだことは気にしなくていい」と父はラウフに語っていたという。
ラウフはその後、オープンソースのソフトウェア開発にのめり込んでいった。ただし、1つ問題があった。「私はプログラミングを学ぶために独学で英語を習得した。なぜなら、スペイン語で書かれた教材がなかったからだ」と彼は振り返る。
17歳でフェイスブックに注目され、高校を中退してサンフランシスコへ渡る
ラウフは10代の頃、JavaScriptライブラリー「MooTools」のコア開発者となり、開発者コミュニティで世界的な評価を得た。この実績はフェイスブックの目にも留まり、同社は採用を検討した。しかし彼がアルゼンチンに住む17歳であることを知って、最終的に採用を見送った。翌年、高校卒業を目前に控えたラウフは、世界各地から仕事のオファーを受けたことをきっかけに高校を中退した。その翌年、彼はサンフランシスコに移り、ファイルやメディアをアップロードするサービス「Cloudup」を立ち上げた。このスタートアップをWordPressを運営するAutomatticに売却した後、彼はウェブホスティングのスタートアップ「Zeit」を創業し、これが後にVercelへと進化した。
Notionがプラットフォーム立ち上げに採用、顧客からの依存度が高まる
Vercelの顧客は現在、AI事業を構築する中で同社への依存度を一段と高めている。評価額113億ドル(約1.8兆円)の生産性・ノートアプリを手がけるNotionは先月、開発者がAIエージェントを構築・デプロイできるプラットフォーム「Notion Workers」の立ち上げにVercelを採用した。
ラウフを「伝説的なプログラマーの1人」と呼ぶのが、Notionのアイヴァン・ジャオCEOだ。ジャオは「今回のローンチにあたってVercelが最良の選択だった」と語る。ソフトウェアの多くがAIエージェント向けに作られるようになる中で、Vercelは人間の開発者とAIエージェントの双方に対応するツール設計をうまく両立している。「そうしたバランスへの適応という点で、Vercelは最速クラスで取り組みを進めている」とジャオは評価する。
ジャオは、個人プロジェクトでもVercelを使っており、休暇中には自作のビデオゲームのデプロイとホスティングに同サービスを利用した。このゲームは、プレイヤーが時空を超えてさまざまな時代の人々と会話できる内容で、彼の狙いは、テクノロジーの最前線が進化する中で、「バイブコーディング」や開発者向けツールの実態を自ら体験して理解することにあった。彼は妻とともに休暇で訪れていたプエルト・バジャルタのビーチで、この取り組みを進めたという。そして新年にNotionの業務が再開すると、彼は全社会議を開き、その知見をチームと共有した。


