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2026.03.28 12:00

AIを使うと頭が悪くなる?「脳の疲弊」を防いでより賢くなるための正しい付き合い方

Shutterstock.com

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これまで以上に多くのことをこなしていると感じている。使うツールやタブ、アウトプットも増えている。それなのに、何か違和感がある。思考が鈍くなっているように感じる。普段は迷わずできる判断を何度も考え直している。1日が終わる頃には疲れ切っているのに、誇りに思えるような深い集中を伴う取り組みは1つも挙げられない。AIはいつからあなたの強みではなくなるのか。そして、いつからあなたを消耗させ始めるのだろうか。

マット・ウルフはクリエイターや起業家、テック愛好家が優れたAIツールを見つけるためのキュレーションプラットフォームであるFutureTools.io(ヒューチャーツールズ・ドット・アイオー)を管理している。ウルフはさらに、登録者90万人以上と急成長中のYouTubeチャンネルも運営しており、人工知能(AI)ツールや新興テクノロジーの最新情報を発信している。AIをワークフローに取り込んで成果を出している人物だ。だが、6年間AIを多用した末にウルフは驚くべきことを語った。「正直なところ、頭は鈍っているのにこれまで以上に一生懸命働いている気がする」

このように感じるのはウルフだけではない。科学もそれを裏付けている。米経営学誌ハーバード・ビジネス・レビューのAIによる「脳の疲労」に関する研究では、AIツールの使用が多い労働者ほど集中的な思考が14%、精神的疲労が12%増加していることがわかった。さらに米マサチューセッツ工科大学(MIT)の別の研究では、エッセイの執筆にAIを使う人と、AIを使わない人の脳活動を追跡した。リサーチをAIに任せた人はその後、一から自分で文章を書くのに苦労した。あなたの知性は、長年かけて築いてきた資産だ。それをうかつにもAIに委ねると、静かに劣化していく。

私は以前、ChatGPTが人をより賢くする可能性について書いた。その可能性を今も信じている。ただし条件がある。それはあなたが主導権を握っている場合に限る。大きな力には大きな責任が伴う。

AIが賢い人を非効率にしてしまう仕組み

AIの「監督」があなたを消耗させる

確認すべき成果物や評価すべき下書き、監督すべきエージェントが急速に蓄積する精神的負担につながる。ハーバード・ビジネス・レビューの研究では、AIの監督が多い労働者では情報過多も19%増加していた。ビジネスを築き上げた前向きな考え方が減り、最悪な類の考え方が増えている。

どこまで監督するかを明確に線引きする必要がある。すべてのAIのアウトプットに全力で向き合う必要はない。どの工程を自動化し、その工程が完了したときにどの成果を最終確認するのかを事前に決めることだ。次のツールを開く前に、それらのカテゴリを割り当てておく。注意力を有限のリソースとして扱い、本当に代替不可能な判断にだけ使うべきだ。

タスクの切り替えはビジネスに必要な思考力を奪う

AIが生成や計算をしている間、空白の時間が生まれる。その隙間時間を別のタスクやメッセージの確認、あるいは別のツールを開くのに使うと深い集中が失われていく。2分の待ち時間がもったいなく感じてマルチタスクをする。しかしその2分間のタスクの切り替えは、思考を再開させるのに時間を要することになり、明晰さが低下するという大きな代償を伴う。こうしてAIを活用した業務は、本来置き換えるはずだった業務よりも忙しいものになってしまう。

AIがバックグラウンドで動作する時間を大切にしよう。その間は、些細なタスクをこなすのではなく、何もしないこと。リラックスして、自分の思考と向き合い、AIが処理を終えるのを待とう。その隙間に何かをしようという衝動に抗うことだ。週間スケジュールには、思いつきではなく意図的にこの時間を組み込むべきだ。2時間の集中した思考は、タスクを切り替えながら6時間働いた場合よりも多くの成果を生み出す。AIに知らず知らずのうちに思考力の低い人間へと訓練されないようにしよう。

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翻訳=溝口慈子

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