公開市場は、ある特定の瞬間にますます左右されるようになっていると私は見ている。それは、歴史的に前例のない規模となったAI技術への投資が、リターンを生み出す(要登録)瞬間である。その瞬間がどのようなものになるかという期待が公開市場の大幅な上昇を牽引しており、増え続けるマクロ経済の逆風にもかかわらず、市場の強さを維持するうえで不可欠な要素となっている。
大企業が、マージンの拡大、生産性の向上、製品ロードマップの加速、研究開発(R&D)の過去最高の進捗といった測定可能な成果を報告し始めれば、これまでの投資の結果は、ようやく具体的な比較対象を得ることになる。だが現時点では、こうした成果の多くが定量的な結果に結びついていない。それでも、多くの投資家はこのナラティブに大きく賭けてきた。
なぜ今回のサイクルは異なるのか
AIスタートアップへのベンチャー投資の多くは、業界エコシステム全体に広く行き渡るのではなく、少数の主要銘柄に集中してきた。これはベンチャー投資における歴史的な常道からの逸脱である。投資家は過去のサイクルから学び、少数の大型案件に集中する戦略へと調整したのだと私は考える。理屈のうえでは、これにより初期リスクを抑えつつ、ブームの局面で活用できるよう資金を温存し、あるいはROI(投資利益率)の期待が外れた場合には守りに回れる。
私が起こり得ると見ているように、AIのROIが立ち上がる瞬間が現実のものとなれば、投資家は大幅に出遅れていた分を取り戻さなければならない。私の予測では、スタートアップ・エコシステム全体に資本が洪水のように流れ込むだろう。さらに、その資本は、資本効率を重視するよう鍛えられ、競争が極めて激しいエコシステムに投下されることになる。
これほど巨額の資本が、これほどのスピードで動く必要があるということは、創業者が資金調達ラウンドで絶大な交渉力を持ち得ることを意味する。製品が現実世界にもたらす実際の成果を測定するデータが得られるため、エコシステム全体のバリュエーションは急騰する可能性がある。
そうなった場合、創業者は、混乱し、速いテンポで進む資金調達ラウンドに備える必要がある。デューデリジェンス(適正評価)と成長計画の準備が鍵となる。人材獲得競争もまた、現実的な制約になり得る(ただし、エージェント型システムの展開と統合が、この制約の一部を相殺する可能性はある)。
賢明に投資し、プレミアムが最も期待できるスタートアップを選べるベンチャーファンドにとって、現在のバリュエーションは極めて魅力的になり得る。それだけではない。私の見立てでは、こうした交渉力をなお維持できるのは、これが最後のラウンドになる可能性が高い。これらのスタートアップは、兆ドル級のプロダクトになり得るものを構築しながらも、わずかな取り分を巡って争ってきたのだ。
増幅されたサイクルにおけるリスクとリターン
今回のサイクルは、ハイリスク・ハイリターンという命題そのものを根底から試す展開になりそうだ。ベンチャーの世界には、無鉄砲な「カウボーイ」であることと、先見の明を持つことの間に、常に紙一重の境界がある。今日、名の知れたベンチャーキャピタリスト(VC)が地位を築いたのは、ビジョンが正しかったからだけではない。それが市場で証明される前に、そのビジョンをどれほど信じ(そしてどれほど大きく賭けた)かによるところも大きい。同じことをして、最終的に誤っていたために忘れ去られた名前も数多い。
潜在的なリスクを過小評価したくはない。今回のサイクルでは、リスクもリターンも増幅されているからだ。しかし、これは私たちがアーリーステージ投資家として引き受けた仕事でもある。カウボーイと、より保守的な立ち位置との間にあるベルカーブのどこに身を置くのかを決めることが、いまの最重要テーマである。
リターンの側面は比較的明白だが、リスクの側面はより複雑である。リスクは多数存在し、複数のベクトルで顕在化し得る。AIのROIが立ち上がるタイミングについて当たるか外れるか、という単純な話ではない。
第1に、「様子見」の期間において、限られた銘柄のスタートアップに資本を集中させること、あるいは他セクターへの投資を鈍らせることに伴うリスクがある。また、逆張りの直感が、極めて現実的な熱狂サイクルに押し流されるリスクもある。強い確信には常に機会費用が伴う。
さらに、AIのROIが立ち上がる瞬間が予測どおり到来した場合、そこには新たなリスクが生じる。初期シグナルが確立されると、ベンチャー投資家は天文学的なバリュエーションに過剰投下し、競争に駆動された疑わしいディールを行い、スピードを優先するあまり、デューデリジェンスや法務など重要要素に関する標準的なベストプラクティスを見落とすという歴史がある。
創業者もまた、こうした過熱市場の力学から無縁ではない。過剰な資本を受け入れ、過度に楽観的な成長目標とタイムラインにコミットしてしまうのは典型的な落とし穴だ。投資家の希薄化、拙速な取締役会議席の配分、資本効率のパラダイムの停止、その他の事業の基礎が、長期的な複雑化や、さらには失敗へとつながる構造的問題を生み得る。
その瞬間に向けたポジショニング
AIスタートアップの創業者であるなら、基本的に選択肢は2つしかない。1つは、迫り来る資本の洪水のなかで、自社がどのようにして競合を凌駕するのかを示すことに徹底して集中し、同時に、そのアプローチが内包するリスクを明確に認めることだ。
もう1つは、どちらのシナリオにも賢明に備えたポジショニングを示すことである。これは細い綱渡りだが、その中には十分なニュアンスがあり、カウボーイ型の投資家と、低リスク志向の投資家の双方に訴求できる余地があると私は考える。
迫り来る瞬間の大きさを理解していること、そしてどちらの結果に対しても、精緻で実行可能で現実的な計画を持っていることを示すことが不可欠である。バリュエーションのレンジ、売上目標、採用(またはエージェント型)戦略について、詳細な計画が必要だ。成長シナリオに備えた「理想の投資家」候補のリストと継続的に対話しておくことは、大いに役立つ。
2つ目の扉の向こう側には、ROIが立ち上がる瞬間がより先送りになる、あるいは期待を下回る場合でも、資本効率と堅固な基礎によって売上目標と中核の成長目標を達成し得ることを示す、同等に詳細な計画を用意しておくべきだ。いまエージェント型ワークフローを構築することは、この点で賢明なアプローチである。両方のシナリオに適合し、いずれの方向にもスケールできるからだ。
この2つの道筋の両方にどう対処するかを解き明かせば、どちらの結果においても成長できるだけの、適切な資本と適切な投資家を引き寄せられるはずである。
ここで提供する情報は、投資、税務、または財務に関する助言ではない。自身の状況に関する助言については、資格を有する専門家に相談すべきである。



