1776年の夏、独立宣言に署名したとき、米国の建国の父たちはリスクを取っていた。大胆で主権ある国家を創り出したとして称賛されるのか、それとも英国王室に反逆罪で絞首刑にされるのか。もちろん歴史が示すのは前者であり、米国が今年250周年を迎えるいま、起業家精神を重んじる国の礎を築いたこの先見者たちの役割に、私は感謝の念を抱いている。彼らのアプローチから何を学べるのか——そして、それが未来に何を意味するのかを考えたい。
「アメリカンドリーム」の礎
独立宣言に署名した56人は大半が商人であり、市場主導のアプローチを推進して植民地を英国支配から切り離した。憲法の制定やその他の施策を通じて、新国家は貿易を開放し、企業に関わる訴訟を裁判官と陪審員に委ね、税の徴収は選挙で選ばれた公職者のみに認めた。トーマス・ジェファソンは最初の大統領演説のひとつで「農業、製造業、商業、そして航海は我が国の繁栄を支える4本の柱であり、個人の自由な事業活動に委ねられてこそ最も栄える」と述べた。この精神こそが、1800年代の産業革命や第二次世界大戦後の好景気とともに、米国を1世紀以上にわたり世界の経済超大国たらしめてきた原動力である。
その土台は、私がいまここにいることにもつながっている。1950年代、祖父は宝飾店を開き、大きな賭けに出て犠牲を払い、結果として非常に成功した事業を築いた。年月を経て私は、家業を離れて自分自身でまったく新しいことを始めるという大きなリスクを取り、ジュエリーとイベントに特化した保険テクノロジー企業を立ち上げた。
どちらの場合も、懸命な努力が必要だった。共同創業者たちと私は保険会社や投資家を回ってピッチを行い、アイデアをもとに資金調達に成功した。事業の収益性と成長可能性を示す堅実なビジネスプランを作成し、チームの専門性を証明し、業界と自社の成長段階に適した投資家を見極めるために膨大なリサーチを行わなければならなかった。それが可能だと感じられたのは、私より前に道を切り開いた起業家たちがいたからである。
米国の歴史には、私が起業の道のりで尊敬してきたロールモデルが数多く存在する。私よりもはるかに貧しい境遇から身を起こし、ビジネスの巨人となった聡明で野心的な人々だ。13歳でスコットランドから移住し、後にU.S.スチールとなる企業を創設したアンドリュー・カーネギー。大恐慌時代に農場で育ち、1店舗から始めた小売業を1兆ドル規模のウォルマートチェーンに成長させたサム・ウォルトン。現代では、貧困の中に生まれながら、そのカリスマ性とビジネス手腕でメディア帝国を築いたオプラ・ウィンフリーや、清掃員として働きながら独学でプログラミングを習得し、メッセージングアプリWhatsAppを共同開発したウクライナ移民のジャン・コウムがいる。こうした物語があるからこそ、アイデアを持つ人々は今も米国を目指すのである。
未来を見据えて
あらゆる経済システムと同様、資本主義は完璧ではない。野放しにすれば、労働者の搾取や不安定な投資環境など、さまざまな弊害を招きかねない。しかし長年にわたる慎重な規制を通じて、米国はその基本構造を、アイデアの創出、新しいものの構築、そして急速な成長を可能にする強力なエコシステムへと洗練させてきた。
2024年、世界銀行はこう指摘した。「米国のイノベーションモデルは長らく世界の羨望の的である」。その根拠として、知的財産を保護し、資本へのアクセスを開く米国の政策を挙げている。さらに、「シリコンバレーのガレージでいじる人々から、一流大学の研究所に至るまで、米国は産業を塗り替え、人々の生活を変えてきた画期的技術を一貫して生み出してきた」と述べている。
現代の一例がAI革命である。2018年以降、米国はスタンフォード大学のAI Indexで首位を維持している。同指数は36カ国を42の指標(研究、民間投資、特許など)で評価するものだ。中国などの国々を抑え、米国は独自の機械学習(ML)モデルのローンチ数や責任あるAI研究でリードしている。また、民間AI投資でも圧倒的な首位にあり、2024年の米国の投資額は672億ドルで、中国の78億ドルを大きく引き離している。
もちろん、いかなる新しいイノベーションにも、消費者を守るためのガードレールが必要だ。私がいる保険テクノロジーの領域では、規制に適合するために多くの取り組みを行っている。次の250年の米国の起業家精神を見据えるとき、リーダーが自社の成功に備える方法のひとつが、まさにそこにあると私は考えている。
第一歩は、自らを教育することだ。具体的には、関係する規制当局を把握し、そのニュースレターや公報を購読して最新の法改正を追い続けることが含まれる。加えて、変更があった際に知らせてくれる全国的なアグリゲーターサービスを探すのもよい。私の事業では、全米保険監督官協会(National Association of Insurance Commissioners)から最新情報を得られるし、ほぼどの業界にも同様の団体があるはずだ。
全50州の異なる規制に注意を払うのが困難に思えるなら、最も厳格な州を特定することだ。そこで規制を遵守していれば、他の州でも遵守できている可能性が高い。
また、新しい規制が日々の業務にどう影響するかを従業員に周知することも重要である。専門的なスタッフ研修はその一つの方法だ。私の会社では、カスタマーサービス担当者が2年ごとに受けるライセンス研修にこうした内容をうまく組み込んでいる。
確かに規制は難題になりうる。しかし、それは米国の優れた経済システムにとって不可欠であり、どの分野においても最良の企業は、恐れからではなく、ルールが市場を公平にし顧客の信頼を築くという意義を理解したうえで、コンプライアンスに適応していく。
利用できる資源と技術がこれほど揃ったいま、キャリアを始めることも、事業を始めることも、かつてないほど容易になったと私は強く信じている。とりわけイノベーションの温床である米国においてはなおさらだ。その点で私たちは、「生命、自由、幸福追求」を優先した賢明な指導者たちに感謝できる。



