欧州

2026.03.23 10:30

ロシアの石油とウクライナの電力を巡るエネルギー戦争、欧州にも波及

ロシア軍のミサイル攻撃を受けたウクライナ首都キーウのダルニツィカ火力発電所。2026年2月8日撮影(Viktor Kovalchuk/Global Images Ukraine via Getty Images)

ウクライナは再生可能エネルギーを整備

エネルギー戦争のもう1つの側面は、各陣営が展開する戦略にある。ここには、ロシアとウクライナの目標が似ているという点で、皮肉な側面もある。ロシアがウクライナの送電網を分断して弱体化させようとしている一方で、ウクライナ側は発電の分散化を図り、電力システムの強靭(きょうじん)性を高めようとしている。

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ロシア軍の空爆は送電網を「孤立化」させ、互いに電力を共有できないように分断することを目的としている。ウクライナの電力設備の大部分は、ソビエト時代に建設された大規模な石炭火力発電所や天然ガス火力発電所であるため、ロシア軍がこれらを攻撃目標として特定するには何の困難もない。これに加え、送電線の損傷により、送電の経路変更や他の地域への緊急供給を行う能力が低下している。これにより、町や村は数週間にわたって暗闇と化し、物流拠点や通信施設、無人機の製造工場などの戦争遂行能力も機能不全に陥っている。ロシア軍の戦略の一環として、ウクライナ国内の広範囲に電力を供給する高圧送電線に対する空からの攻撃も行われている。

ロシア軍の攻勢に対し、ウクライナはさまざまな方法で対抗している。同国は迅速な復旧作業や計画停電の実施、病院や暖房施設などの重要施設への優先的な電力供給により、送電網の稼働を維持してきた。これらの措置は国内の一部地域では現在も有効だが、他の地域では執拗(しつよう)な空爆とエネルギーテロによって、有効性は低下している。

ウクライナが講じている別の対策としては、太陽光や風力などの発電の分散化に加え、需要地の近くに40メガワット以下の小型モジュール式ガス火力発電所を建設することが挙げられる。欧州の非営利組織からの資金援助を受けたこの取り組みは、地域の電力網の耐障害性を高め、重要なサービスの継続的な提供を可能にするものであることが実証されている。病院や学校、送水ポンプ場などの重要施設向けに太陽光発電や蓄電池システムが導入されており、現在では風力発電所も稼働している。

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こうした小型で分散した設備の数は数百にわたり、標的とするのが難しく、中央送電網が故障した場合でも稼働し続けることができる。ウクライナ太陽エネルギー協会の推計によると、昨年までに1.5ギガワット以上の屋上太陽光パネルが設置され、さらに多くの計画が進められている。

これは先例となる可能性がある。ロシアが「闇の島」を作り出そうとする中、ウクライナは「光の島」で対抗している。これらの島々は、厳密には再生可能エネルギーだけで電力を賄っているわけではなく、多くの場合、ガス(小型の可動式タービン)や原子力による安定した発電を基盤としている。ウクライナの電力の約半分は依然としてガスや原子力が賄っている。計画では、国内各地に太陽光発電設備を増設するほか、小型モジュール炉(SMR)を導入する予定で、現在稼働しているロシア設計の大型発電所を置き換える可能性もある。

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翻訳・編集=安藤清香

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