米国で最もメジャーなたんぱく源である牛ひき肉の価格がこれまでになく高騰している。ただでさえ肉用牛の飼育頭数が75年ぶり最低の水準に落ち込む中、燃料、肥料、飼料用トウモロコシの値上がりが相まって、牛ひき肉価格は1ポンド(約454g)あたり7.50ドル(約1200円)を超えそうな勢いだ。しかも、最悪の事態はまだ始まってすらいない。
全米の家庭で平日の夕食の定番食材となっている牛ひき肉は、消費者が想像するよりも長く複雑な道のりを経てキッチンの冷蔵庫に届いている。
すべては牧場で子牛が生まれるところから始まる。だが、その牧場はこれまでに干ばつ、山火事、洪水、さらには長年にわたる維持費の上昇を乗り越えてきている。無事生まれた子牛は肥育場へ移され、飼料を与えられて成長するが、飼料用のトウモロコシは窒素肥料を使って栽培され、ディーゼル動力機器で収穫され、ディーゼルトラックで輸送されてくる。成長した牛はいよいよ屠殺・加工されるが、その工場の稼働にもエネルギーを消費する。
加工されたひき肉は、おそらく石油由来のプラスチック包装で真空パックされ、ディーゼル駆動の冷蔵トラックに積み込まれて流通センターへ運ばれる。その後、トラックでスーパーマーケットへ運ばれ、開放型の多段冷蔵ケースに並べられるが、米環境保護庁によるとこの冷蔵ケースはスーパーマーケットの冷蔵設備が消費する総電力の40~60%を占めている。
買い物かごに入れられる牛ひき肉パックの値段には、エネルギーや飼料、石油製品のコストが上乗せされているのだ。現在、これら3つの要素すべてが一斉に、米国とイスラエルの対イラン軍事行動により歴史的な価格上昇圧力にさらされている。
イラン攻撃は、単にガソリン価格を急騰させただけではない。牛肉価格の爆発的な高騰の導火線に火をつけた。この価格爆発の影響が完全に表れるまでには半年から1年ほどかかるだろう。そして、米国の消費者はこれから起こる事態に対して全く準備ができていない。



