厳しい現実として、ペルシャ湾は世界でも最も安価な天然ガスの埋蔵地であり、これがアンモニア生産に不可欠な原料となっている。
カタール、サウジアラビア、イランの3カ国は世界の尿素輸出国トップ10に名を連ねるが、ホルムズ海峡は現在、事実上封鎖されている。世界最大の窒素輸出国である中国は、8月まで輸出を停止すると発表した。欧州はロシア産天然ガスの供給を失って以来、窒素生産を通常生産能力の4分の3の水準で維持している。世界的な窒素市場は、イラン攻撃前からすでに危うい綱渡り状態にあったのだ。
農業専門ニュース番組U.S. Farm Reportのアナリストは、現在の窒素価格では採算が合わないとしてトウモロコシ栽培に見切りをつける農家が出てくると分析。今春に100万~150万エーカーの農地が大豆に作付転換する可能性があると指摘する。これとは別に米農務省は開戦に先立ち、世界的な供給過剰と利益率の悪化により2026年のトウモロコシ作付面積は480万エーカー減少するとの予測を示していた。
今春の肥料価格高騰がトウモロコシの作付面積減少や施肥量の削減につながり、秋の収穫量に影響すれば、トウモロコシ価格は上昇する。そして肉用牛の飼料コストも道連れとなる。
牛ひき肉の値段はいくらになる?
以上4つのコスト上昇要因を、現実的なシナリオにまとめてみよう。
2026年の米国人1人あたりの牛肉消費量は56.9ポンド(約25.8kg)と予測されている。対イラン軍事作戦の展開について最も中間的なシナリオの上限値を適用すると、米国人1人が年間に食べる牛ひき肉の購入価格は現在より31.84ドル(約5000円)高くなる。平均的な家庭(3.2人)なら年間約102ドル(1万6000円)の値上げだ。
大した金額ではないように思えるかもしれないが、2020年1月の牛ひき肉価格が1ポンドあたり3.99ドルだったことを思い出してほしい。つまり、6年前と比べて家庭の出費が年間602.68ドル(約9万6000円)増えることになるのだ。
しかも、値上がりするのは牛ひき肉だけではない。やはりトウモロコシを飼料とする鶏肉、豚肉、乳製品の価格も、同じコスト要因によって押し上げられるだろう。店頭のあらゆるたんぱく質食品が、牛肉と同じ運命をたどる。
その影響は、秋の感謝祭からクリスマス、新年にかけて牛肉需要がピークを迎えるホリデーシーズンに、米国の食卓を襲うだろう。


