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2015.10.20

オバマ大統領も使ったMediumがソーシャル機能を強化

Mediumの共同創業者兼CEOであるエヴァン・ウィリアムズ氏<br />(Photo by Michael Kovac/Getty Images for Vanity Fair)



Mediumの共同創業者兼CEOであるエヴァン・ウィリアムズは、シャイなことで知られる。しかし、10月7日、サンフランシスコで行われた豪勢なイベントでは、活気に満ちた姿を見せていた。43歳のウィリアムズは、Twitterの共同創業者でビリオネアとしても有名だ。イベントでは、リニューアルされたMediumのアプリが公開された他、新たなコンテンツ提携や収益化策が発表された。

ブログのプラットフォームのMediumは、10月7日にウェブおよびアプリのアップデートを行った。刷新された内容には、特定のユーザーのプロフィールにリンクできる「メンション機能」や、新しい編集ツール、投稿やコメントを見つけるためのディスカバリータブ、よりモダンなデザインになったロゴ、Medium以外の編集ツールで記事を作成してもMediumに直接公開できるPublishing APIの提供などが含まれる。

ウィリアムズは年初のインタビューで、Mediumの収益はまだそれほど大きくないと述べていた。しかし、現在は新たなネイティブ広告のソリューションやサブスクリプション課金などを導入して、執筆者やパブリッシャーが収益化できる仕組みを構築しようとしている。

提携パブリッシャーを拡大
パブリッシャーとの新たなパートナーシップも発表した。提携先にはThe Awl、Discovery Communications、Fusion、Steven Johnson’s How We Get To Next、Mic、MSNBC、Time Inc’s Travel and Leisureなどが含まれ、これらのパブリッシャーがMedium用にオリジナルの記事を執筆したり、記事のクロスポストを行うという。

ウィリアムズは従来のソーシャルネットワークが果たせていないニーズをMediumで満たしたいと語った。「そのために、より優れたパブリッシングの仕組みを作る必要がある。多くの人々がMedium上で重要な問題について意見を共有するようになり、とてもうれしく思っています」

ウィリアムズによると、Mediumアプリのユーザー滞在時間が過去3ヶ月間で3倍に増え、ウェブよりもMediumアプリの利用時間が長いという。三月の時点で、ブランド各社が記事をパブリッシュする支援を行うことで収益を上げていると述べていたが、ユーザーらはネイティブ広告のキャンペーンに対して好意的な反応を見せているという。

「Mediumのユーザーは、プロが手掛けた良質なコンテンツであれば、その記事にたどり着いた経路に関わらず読む傾向があることがわかりました」と担当者は述べた。
Mediumの創業は2012年。その設立のビジョンをウィリアムズはこう語る。
「個人のストーリーやアートに関する記事、専門家による意見など、様々な分野のコンテンツが同居し、民主的で、楽しく、パワフルな意見が交わされる場にしたかった」

Mediumはこれまで、文化的な意義の大きいシーンにおいて、情報を発信する重要な機能を果たしてきた。例えば、「#ILookLikeAnEngineer」というソーシャルメディアキャンペーンは、あるエンジニアが8月にMediumに投稿した記事がきっかけとなって急激に広まった。

オバマ大統領がスピーチ原稿を掲載
そして、今年はオバマ大統領が一般教書演説をMediumに投稿して大きな話題となった。しかし、今のところMediumは決して大衆向けのツールとはなっていない。Mediumの5月時点の月間ユニークビジター数は2,500万人だった。最近の資金調達がこの指標を押し上げるのに貢献するかもしれない。Mediumは、昨年のシリーズAラウンドで2,500万ドル(約30億円)を調達し、今年9月にアンドリーセン・ホロウィッツ主導で実施したシリーズBラウンドでは、更に5,700万ドル(約68億円)を調達している。

現在、約1,500ものパブリッシャーがMediumに投稿しており、滞在時間を示す独自の指標、「Total Time Reading」の半分はこれらのパブリッシャーによるものだ。クリエイターやパブリッシャーがMedium上でコンテンツを共有し、自身のURLも掲載できるようにすることで、何千ものパブリッシャーがコンテンツをMedium上に移動するようになるかもしれないとウィリアムズは期待を寄せる。

「今回リリースしたpublishing APIによっても投稿数が増えるでしょう」とエンジニアのKatie Zhuは話す。このAPIは、ウィリアムズが共同創業者である編集ツールのBloggerや、WordPressなどと連携している。

「我々は、自分たちが作り上げた編集ツールを誇りに思っています。どこで記事を書いても、誤植をMedium が自動で修復してくれます。皆さんが使い慣れた編集アプリを使ってMediumに記事を投稿することができるのです」と担当者は述べた。

ソーシャル機能を強化
今回発表された新機能によって、Medium上での他のユーザーとのエンゲージメントがより簡単に行えるようになった。例えば、新しい「メンション機能」を使うと、他のユーザーのMedium上のプロフィールページとリンクすることができ、「レスポンス機能」では、記事内の特定の行に対してコメントすることができる。

また、今後は他のユーザーにプライベートメッセージを送ることも可能だ。更には、自分の執筆した記事を他人がハイライトしたり、コメントを残したり、自分のユーザーネームについて述べたときに、アラートが通知されるという。コンテンツの検索も簡単になり、新しく設置された「Explore」タブや、「Top Stories」、「ブックマーク」を使って興味ある記事にたどり着きやすくなった。

「執筆という作業は、特に初心者にとっては簡単ではない。我々はそうした人々を手助けし、インスピレーションを与えたいのです」とデザイナーのMarcin Wicharyはイベントで語った。

ウィリアムズは、新しくなった幾何学的なロゴを披露し、新しいマーケティングキャンペーンを展開することを発表した。その内容は、面白い記事から個人のストーリーまで、Mediumに投稿された様々な記事の中から印象的なフレーズを抜き出して紹介していくというものだ。

「クリエイターをヒーローにすること。それが我々にとって究極のゴールです」とウィリアムズは話した。
「私は、全ての人が情報発信できる、よりスマートな世界を作ることができると確信しています」とウィリアムズは付け加えた。

文=キャサリン・チャイコフスキー(Forbes)/ 翻訳編集=上田裕資

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