経営・戦略

2026.03.21 10:22

エグゼクティブコーチングは人事の戦略的要件である──「聖域」と「波紋」の視点から

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上級リーダーの役割は、純粋なオペレーション監督から、組織パフォーマンスにおける戦略的パートナーへと根本的に変容した。今日の人事エグゼクティブは、複雑な企業文化の変革を進め、グローバルな人材課題を管理し、ますます多様化する労働力の中で心理的安全性を育む必要がある。

それでも、重要な問いが残る。すべての人を支える役割を担うリーダーを、いったい誰が支えるのか。人事部門の上級リーダーに対するエグゼクティブコーチングは、こうした専門職が組織変革を推進しながら有効性を維持するための基盤となる。

Fortune 500企業の経営幹部を支援するエグゼクティブコーチであり組織戦略家でもあるChantalle Couba博士の研究、Fran Johnston博士の共鳴型リーダーシップ理論、そして近年の実証研究は、エグゼクティブコーチングがリーダーシップの持続的な有効性を支える土台であることを示している。

聖域としてのコーチング空間

Coubaは、効果的なリーダー育成には、内省のための専用かつ中立的な空間が必要だと捉えている。彼女の「プロフェッショナル資源交換」に関する研究では、コーチング環境を一種の「サードプレイス」(筆者の表現)として位置付けている。多くのプロフェッショナルが家庭と職場の間で責任を行き来する一方、上級リーダーには明確に異なる追加の課題がある。組織のウェルビーイングに責任を負いながら、自身の職務上の要求を整理するための構造化された機会を欠いている場合が少なくないのだ。

Coubaは、コーチング関係を、リーダーが組織上の役割に伴う制約から自由に課題を検討できる、心理的に安全な「コンテナ」と表現する。常に答えや方向性を示すことに慣れたエグゼクティブにとって、これは大きな転換である。コーチング空間では、疑問を抱き、不確かであり、希望を持ち、恐れを感じてよいという許可が与えられる。この心理的安全性は、単なる慰めではなく、パフォーマンスを可能にする。

コーチングの中で自らの前提や脆さを見つめることで、リーダーは組織において同様の環境を構築する力を身に付ける。Coubaが提唱する精神的な聖域という概念は、リーダーが真正性のあるリーダーシップを体現する能力を新たにしてチームに戻ることを可能にする。

金融サービス業界での30年のキャリアを振り返ると、私自身を含め多くの人が目の前の仕事に一点集中していた。出張続き、週70時間超の労働、家族を養うためなら何としても勝つ。そんな中で「サードプレイス」という発想は、第三の目を付け加えるようなものに思えただろう。「休んでもいいのか。あなたを信じていいのか」。立ち止まり、振り返り、助けを求めながら成果を出す――ただしメンタルヘルスを犠牲にしない――その勇気を、私は若い世代に敬意をもって称えたい。

皮肉なことに、人事部門のリーダーは、収益を生み出す存在と見なされにくいがゆえに投資が手薄になり、最小限の人員で業務に当たることが一般的だ。人事リーダーが組織全体にとって有効な貢献者であることを期待するなら、この見方は転換される必要がある。

共鳴型リーダーシップと組織文化

フィラデルフィアのTeleos Leadership InstituteのCEOであるFran Johnston博士は、効果的に率いるために必要なエモーショナルインテリジェンスに焦点を当てている。『Becoming a Resonant Leader』の共著者でもあるJohnstonは、リーダーシップは本質的に関係性の営みだと位置付ける。この区別は上級エグゼクティブにとって重い意味を持つ。リーダーは組織の感情的な空気を定める。ストレス、反応性、疲弊の状態で行動するリーダーが放つエネルギーは、Johnstonが「感情の伝染」と呼ぶ現象を通じて、より広い従業員層へと波及する。

ゲシュタルト理論や神経科学の研究に裏打ちされたJohnstonの仕事は、エグゼクティブコーチングが、リーダーが「共鳴(resonant)」する状態――自分自身と整合し、他者に同調できる状態――になることを可能にすることを示している。コーチングを通じて、エグゼクティブは自らの影響力を管理し、組織文化を損なうのではなく形成することを学ぶ。

TeleosにおいてJohnstonは、変化の局面で最も重要なのはリーダーの振る舞いだと強調する。コーチングは、確立された慣行をただ徹底させるのではなく、説得力ある方向性を示すことで他者を鼓舞できる戦略的俊敏性を育てる。エグゼクティブにとってコーチングは、再生のための重要な手段であり、高圧の役割でしばしばリーダーを頓挫させる消耗を防ぐ。

Merrill Lynchに在籍していた頃、私は「ハイポテンシャル」リーダーとして指名され、Franがエグゼクティブコーチとして付くことになった。新米リーダーとして楽観的な見方をしていた時期に始まったFranとの関係を振り返ると、「教え諭す」のではなく知恵を分かち、導いてくれる公平な第三者の重要性を痛感する。真実を語ることがもたらし得る影響を恐れ、ガードを下げて正直になることをためらう場面は多い。Franは、苛烈な金融の世界で私が「大人になる」ことを助けてくれた。30年以上の道のりを経た今も、彼女は私のコーチであり、そして何より友人である。

卓越したいのなら、自分自身のFranを見つける必要がある。

組織への戦略的インパクト

上級リーダーがエグゼクティブコーチングに取り組むと、その恩恵は個人の成長にとどまらない。コーチング文化が立ち上がり始めるのだ。Coubaが実務の中で観察しているように、心理的安全性が自らのパフォーマンスをどう変えるかを体験したリーダーは、組織全体でウェルビーイングを優先する方針を後押しするようになる。

Johnstonは、リーダーシップに関する重要な著作の中で、共鳴型リーダーがより有効な戦略アドバイザーになると指摘している。エグゼクティブの議論の場で自分の声を確立できず、戦略的パートナーではなく機能別の専門家として見られてしまうリーダーは少なくない。エグゼクティブコーチングは、エグゼクティブとしてのプレゼンスを磨き、影響力の能力を育てることで、このギャップを埋める。さらに、権力、関係性、競合する優先事項といった組織ダイナミクスを、従来の職能研修では得にくい高度さで扱えるようにする。

リーダーシップ基盤への戦略投資

働き方の進化、技術的ディスラプション、そして組織のキャパシティに対する持続的な要求が重なる環境では、上級リーダーは、組織の安定を提供し続ける圧力に晒される。Coubaの仕事が示すように、彼らには自らの能力を伸ばすための専用の場が必要である。Johnstonが示すように、効果を持続させ消耗を避けるには、共鳴を育まなければならない。

追記として透明性のために述べると、Coubaは私の著書Unshakable Confidenceに「Beyond Lattes and the Lotus Pose」という所感を寄稿している。またJohnstonは、私の以前の著書Sell More and Sleep at Nightの序文を執筆し、内容にも大きく貢献している。Coubaの仕事は「サードプレイス」と、職場を離れた外部コーチングのインパクトに焦点を当てた。Johnstonの仕事は、とりわけ、真実を語ったことで報復を受ける恐れのない安全な場で人材に投資する必要性などの概念を論じた。

人事部門の上級リーダーに対するエグゼクティブコーチングは、是正措置としての介入ではなく、戦略的投資である。心理的安全性、エモーショナルインテリジェンス、変容的学習――いずれも最新研究により妥当性が示されている原則――にリーダーシップを根付かせることで、組織はリーダーが業務を管理するだけでなく、パフォーマンスを喚起できるようにする。

forbes.com 原文

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