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2026.03.20 11:09

AIエージェントを「共に考える」存在へ──認知のインターネットが拓く分散型超知能

AdobeStock

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今日のAIエージェントは接続はできるが、一緒に考えることはできない。世界最高水準の専門家を集めたのに、名刺交換しかできないチームを編成するようなものだ。

これこそが、現在の「エージェントのインターネット(Internet of Agents)」の根本的な制約である。本シリーズの前回記事で述べたとおり、AIエージェントのネットワークは互いを発見し、メッセージを交換できる。これは水平スケーリングに向けた重要な第一歩だ。しかし、接続は認知ではない。

「エージェントのインターネットは第一歩にすぎない」と、Outshift by CiscoのGM(ゼネラルマネジャー)兼シニアバイスプレジデントであるVijoy Pandeyは言う。「彼らはタスクで協働できるが、一緒に考えることはできない。私たちは集合知の力を活用できていない」

PandeyとOutshiftのチームは、その次に来るものを探っている。単に接続されるだけでなく、意味(セマンティクス)として協調するネットワークだ。彼らはこの次の段階を「認知のインターネット(Internet of Cognition)」と呼ぶ。これは「分散型人工超知能(distributed artificial superintelligence)」を可能にするために設計された、新たなエージェント型AI(agentic AI)のインフラである。すなわち、エージェントと人間が共に考えることで立ち現れる集合知だ。

では、そのようなシステムを構築するには何が必要なのか。

集合知に必要な要件

初期の人類の知能が飛躍的に増幅されたのは、言語の登場によってである。認知のインターネットは、AIに対して同様の転換を実現することを目指す。

「必要なのは、集団が個人よりも指数関数的に強力になることを可能にすることだ」とPandeyは言う。「そのためには、7万年前に人間が経験したのと同じように、エージェント型の認知進化が必要になる。要点は3つ、共有された意図、共有されたコンテキスト、そして集合的イノベーションだ」

共有された意図とは、共通の目標に向けた整合(アライメント)だとPandeyは説明する。実務では、金融、製造、営業のAIエージェントが、個々の目的が異なっていても、同一のビジネス成果に向かって働くといったことを意味し得る。

共有されたコンテキストとは、集合的な記憶を構築し保持する能力である。あらゆるやり取りのたびにゼロから始めるのではなく、エージェントは永続的な組織知のプールを前提に動作する。それは時間とともに複利的に蓄積し、過去の意思決定、制約、学習の上に積み上がっていく。

集合的イノベーションとは、単一のモデルでは解けない問題を解くために、エージェントが共に推論することだ。並列にタスクを実行することではなく、互いの洞察を土台に思考を発展させていく真の協働的思考である。これは本シリーズ第1回の記事で扱った医療システムが実現できなかったことであり、認知のインターネットが可能にするよう設計されていることでもある。

「これらが集合知の構成要素だ」とPandeyは言う。

認知のインターネットを構築する

集合知が立ち現れるためには、意図的に設計されなければならない。つまり、協調のために設計されたインフラを構築する必要がある。

「アーキテクチャについては、3層で捉えている」とPandeyは説明する。第1層は、Pandeyが「認知状態プロトコル(cognition-state protocols)」と呼ぶものだ。これは、エージェントが意味を一致させるための文法である。今日のエージェントはAPIコールを通じてデータをやり取りするが、理解を共有しているわけではない。認知状態プロトコルにより、エージェントは互いの意図を解釈し、情報を送受信するだけでなく、共通の目標達成に向けて協調できるようになる。

これは根本的な転換を意味する。元来のインターネットは、決定論的な機械を接続するために構築された。リクエストを送れば、定義されたレスポンスが返る。AIエージェントはそのようには動かない。

「私たちは決定論的コンピューティングから確率論的コンピューティングへ移行している」とPandeyは言う。「エージェントやモデルは決定論的には振る舞わない。100%明確に定義された入力を与えることはできず、出力においても100%の確実性は得られない」

第2層は「認知ファブリック(cognition fabric)」であり、やり取りをまたいで存続する共有メモリーのシステムである。Pandeyが付け加えるように、組織は「共有メモリー、共有知識、共有コンテキストのコーパス(corpus)」を構築しなければならない。各タスクの後にリセットするのではなく、エージェントは組織の記憶を参照する。つまり、消えてしまうのではなく蓄積していく知識である。これが、やり取りのたびに進歩がリセットされない「ラチェット効果」だ。

第3層は「認知エンジン(cognition engines)」であり、集合知を実用に落とし込む。これには2つの形がある。過去の解決策を再利用して集合的な問題解決を加速する「アクセラレーター(accelerators)」と、コンプライアンス、安全性、責任あるAI(responsible AI)の境界を徹底する「ガードレール(guardrails)」だ。Pandeyの言葉を借りれば、「イノベーションを進める際にも、可能なことと合法なことの境界を越えない」ためである。

これら3層──プロトコル、ファブリック、エンジン──が一体となって、接続されたシステムを、協調する知能へと変換する。

今後の道筋

企業がいま下すアーキテクチャ上の選択は、集合知が実用段階に入ったときに、その恩恵を享受できるかどうかを左右する。

全3回の最終回となる次回記事では、技術的な意思決定、実装パターン、そして次世代のエンタープライズAIを規定する実世界での応用を含め、これが実務において何を意味するのかを掘り下げる。

forbes.com 原文

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