両腕が2本、両脚が2本。顔つきは「スター・ウォーズ」のアンドロイド「C-3PO」と同じ技術的遺伝子プールから生まれてきたかのようだ。
もっとも、シスの攻撃と戦っているわけではない。ヒューマノイドロボットと呼ばれるこれらの装置は、先月末に発表されたパイロットプログラムの一環として、ドイツ・ライプツィヒのBMWグループの組立工場で実際の人間と並んで働いている。ドイツの自動車メーカーであるBMWはこれに先立ち、米サウスカロライナ州スパータンバーグ工場でもヒューマノイドロボットのパイロットプログラムを実施し、成功を収めている。
従来、工場で使われてきたロボットとは異なり、ヒューマノイド型は人工知能(AI)の活用により、はるかに多様な機能を担える。技術を、はかない概念の領域から物理世界へと引き上げる存在だ。
「AIが生み出すべき価値は、物理世界に触れ始めない限り、完全には実現しないと思う。AIはデジタルの世界で多くのことができるが、本当の価値が実現するのは物理世界に触れ始めたときだ。だからこそ『フィジカルAI』と呼ばれている」。ベンチャーキャピタル(VC)Autotech Venturesのマネージングディレクター、ブラク・センダクはインタビューでこう説明した。
実際、企業が高度に設計された二足歩行のロボットが、一定の役割で給与を得て働く人間を置き換えうると想像するなか、ヒューマノイドロボットは注目の話題となっている。
だがセンダクも、昨秋に公表されたマッキンゼー・アンド・カンパニーのレポートも、最終製品の安全性と性能が重要となる自動車製造のような作業を担える段階に到達するまでには、まだ長い道のりがあると警告する。
「パイロットで技術的に実証されたことと、大規模に商業的に成立することの間には、依然として大きな隔たりがある」。マッキンゼーのレポートはそう述べている。「見出しを飾るプロトタイプは印象的だが、現実の環境で一貫性があり、信頼でき、経済合理性をもって正当化できる性能を発揮するには、まだ程遠い」
センダクは、工場の現場で長年使われてきた単機能ロボットではなく、ヒューマノイドを「汎用」ロボットだと位置づける。そのうえで現時点では、倉庫でのピッキングや仕分けといった、より繊細さを要しない作業で有用だが、それは出発点にすぎないと指摘する。
「汎用ロボティクスは、まだその段階にない。これはまだごく初期フェーズだ。だから汎用ロボットをそのまま組立ラインに投入して、24時間365日で製造してくれると期待することはできない。しかし、方向性としてはそこに向かっている」。彼はそう説明した。
「そこに向かう」ための鍵となる要素は、フィジカルAIを備えたロボットを製造システムにどう統合し、成功させるかを学ぶことにある。
それこそがBMWのパイロットプログラムの目標である。BMWグループで生産ネットワークおよびサプライチェーン・マネジメントを統括する上級副社長、ミヒャエル・ニコライデスは声明で、同社は「フィジカルAI、すなわち学習可能なAI搭載ロボットの活用を、実際の産業条件下で試験し、さらに発展させたい」と述べている。
センダクは、汎用ロボットがコスト効率よく能力を高めていく未来を見据えている。彼が「ミドルレイヤー」と呼ぶ企業群が、Androidマーケットプレイスに似たプラットフォームからダウンロードし、さまざまな作業を動かすためにインストールできるアプリケーションを開発することで、それが可能になるという見立てだ。
「新しいスキルをダウンロードするだけで、ほら、ロボットは今まで以上の能力を備える。数カ月後に別のことをさせたいなら、また新しいスキルをダウンロードすればいい」。彼はそう予測した。
ヒューマノイドロボットが人間を置き換え、大規模な雇用喪失をもたらすのではないかという恐れはどうか。
センダクは、確かなことを言うにはまだ早いとしつつ、銀行にATM(現金自動預け払い機)が設置された際、人間の行員が置き換えられるのではないかと懸念されたことを引き合いに出す。
しかし実際には、ATMによって新たな支店を開設しやすくなり、むしろ追加の業務に集中できる人間の行員をより多く採用する結果になった、と彼は言う。
とはいえ、それはあくまで1つの事例であり、産業用途とは大きく異なるとも指摘する。
それでも、さらなる開発が進めば、人間のようなロボットが倉庫から工場、さらにその先へと、より大きな役割を担っていくことは疑いようがないように見える。
「ヒューマノイドロボットはもはや珍奇な存在ではない」。マッキンゼーのレポートはそう述べる。「商業的な重要性に近づいており、安全性、持続的な稼働時間、器用さと機動性、コストという4つの橋をすべて渡れば、スケールしていく」
センダクの水晶玉は、この点については曇りがない。彼の見立てでは「避けられない。いずれそこに到達する」という。
ヒューマノイドロボットへの楽観論に、ひとさじの警戒感が混じる──それもまた人間の本性である。



