「wena(ウェナ)」というプロダクトの物語はひとりのルーキー社員の情熱から始まった。2015年、ソニーが社内のオープンイノベーションを通じて新規事業を創出する目的で展開していた「Sony Seed Acceleration Platform(SSAP)」から、この革新的なスマートウォッチの構想は産声を上げた。
一般的なスマートウォッチが「時計そのもの」をデジタルデバイスに置き換えるのに対し、wenaの最大の特徴は「バンド部分」に機能を凝縮させた点にある。これにより、ユーザーはお気に入りのアナログ腕時計のヘッドをそのまま活かしながら、通知の受け取りや電子決済、活動ログの計測といった最新テクノロジーの恩恵が受けられる。
アナログ腕時計に装着できるスマートウォッチが復活
2015年当時、ソニー独自のクラウドファンディングサイト「First Flight」にて支援を募ったところ、瞬く間に1億円を超える資金を集め、当時の日本国内クラウドファンディングにおける支援額No.1記録を樹立したことが話題になった。
その後、プロダクトの歴史は2016年に一般販売が開始された初代の「wena wrist」から始まり、ディスプレイを搭載して小型化した第2世代、そしてバックル部に機能を統合した「wena 3」に進化が続いた。
wenaは時計としての美学を損なわないウェアラブルデバイスとして、ガジェットファンのみならず、伝統的な機械式時計の愛好家からも厚い支持を得た。セイコーやシチズンといった日本を代表する時計メーカーとのコラボレーションも実現し、「アナログ腕時計に装着できるスマートウォッチ」という独自のポジションを確立した。
しかし、2024年にwenaシリーズに関する衝撃的なニュースが駆け巡った。ソニーは当時の現行モデルであった「wena 3」のサービス提供を2026年2月28日をもって終了することを発表したのだ。
多くのファンがその幕引きを惜しむ中、wenaの灯火は消えていなかった。2025年7月にwenaの生みの親である對馬哲平氏が、ソニーから商標と特許を継承する形でaugment AI株式会社を設立。かつてのwena開発チームとともにスピンアウトして、wenaのプロダクトとビジネスを受け継いだのだ。



