暮らし

2026.04.04 15:00

被災直後の思わぬエール復興の大きな励みに:桜井一宏 獺祭 代表取締役

THE GIFT #34

THE GIFT #34

贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。


THE GIFT #34

桜井一宏 
獺祭 代表取締役

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災害により営業中の店舗も限られるなか、購入してくれた飲み物。
その気持ちが、何よりのギフトであった。

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2018年7月、西日本を豪雨災害が襲った。酒蔵の面前を流れる川が氾濫し、酒蔵の1階と対岸の直売所が水没。さらに停電により、一時的に酒づくりができなくなってしまった。

社員総出で懸命に復旧作業に取り組むなか、あれは被災から2日後の夕方のことだった。近くの道路に見知らぬ人が立っていた。声をかけると、返答は英語。聞けば香港から日本への旅行中に酒蔵の被害を報道で知り、心配で居ても立ってもいられなくなり、ここまで来たのだという。そして「店が閉まっていて何も買えなかったのですが...」と、コンビニの袋に入った数本のお茶やジュースを手渡し、「みんな獺祭を待っています。頑張ってください!」とだけ伝え、帰っていかれた。

酒蔵があるのは、新幹線の駅や空港から車で40-50分の場所。道路状況も悪いなか、ここまで来るのは簡単なことではなかっただろう。それでも旅の貴重な時間を割き、直接伝えてくれた「待っています」の言葉は、私たちの胸を強く打ち、大きな励みとなった。

おかげさまで、酒蔵は完全に復活した。今も当時支えてくださった全国・世界中の皆さまへの感謝を胸に、日々酒づくりを続けている。


さくらい・かずひろ◎1976年、山口県生まれ。早稲田大学を卒業後、一般企業へ就職。その後、実家である旭酒造へ入社。ニューヨークをはじめとした海外展開の礎を築いた。2016年に社長就任。23年にはニューヨークで新ブランド「DassaiBlue」をスタート。25年6月に社名を「獺祭」へ変更。

文=伊藤美玲 イラスト=東海林巨樹

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