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2026.04.03 16:30

10兆円企業への「知行合一」

大本晶之|丸紅 代表取締役社長

大本晶之|丸紅 代表取締役社長

地下鉄竹橋駅直結の丸紅ビル。オフィスに続く社員用エレベーターには小さなモニターがついている。2025年5月から、このモニターにある情報が表示されるようになった。自社の株価と時価総額だ。

丸紅が2025年度から3カ年の中期経営戦略「GC2027」を発表したのは同年2月。目を引いたのは、2030年度までに時価総額10兆円超という目標だ。発表時の時価総額は約3.8兆円。10兆円達成には3倍近い成長が求められる。かなりチャレンジングだ。

この目標設定には4月から社長に就任予定だった大本晶之の意向が働いていた。本人は意図をこう説明する。「私は『become better than what they believe they can come Today(自分が今なれると信じている以上のものになる)』という言葉が好き。成長のエッセンスは、高い目標を掲げて、今日考えられる以上の自分たちになろうと繰り返すこと。そのためには10兆円超というわかりやすいシンボルが必要でした」

もちろんスローガンを掲げるだけでは人は動かない。大本はトップ就任以降、「成長領域×高付加価値×拡張性」の事業を戦略プラットフォーム型事業と位置づけ、そこにリソースを寄せるという勝ち筋を繰り返し説明。それにより、社内の懐疑的な空気が変わってきたという。

「エレベーターの時価総額表示は、私が指示したわけではなく、社員が自分たちで考えて始めたもの。組織全体にアラインできてきた証左だと思っています」ストレッチな目標に挑んでこそ人や組織は成長する-。大本はそれを自身で体現してきた人生だった。

就職先に商社を選んだのは、海外に出てみたいという純粋な好奇心から。入社して電力部門に配属されて2年目、いきなりチャンスが訪れた。コスタリカに赴任し、円借款で建設する地熱発電所の担当になったのだ。

現場はサソリやゲリラに警戒しなければいけない地域。ただ、キツかったのは過酷な環境より仕事の内容だ。若手の研修の意味合いで派遣されたが、とりまとめ役のメーカー社員が急きょ帰国し、「かわりにキミがやれ」と指名された。

「無我夢中でしたが、今考えると相当にハードシップが高かった。最後まで見届けてからお客様に挨拶すると『よくやってくれた。最初はどうかと思ったけど、若い人にはポテンシャルがあるね』とねぎらってくださった。人には困難を乗り越えられるだけのポテンシャルがある。そう信じられる原体験になりました」

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文=村上敬 写真=榊水麗

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