アイデアが認識される過程で、影響力はどんな役割を果たすのか
こうした現象に興味を持った私は、影響力研究の第一人者であるロバート・チャルディーニに話を聞いた。『影響力の武器』や『PRE-SUASION:影響力と説得のための革命的瞬間』(邦訳は共に誠信書房)の著者である同氏は、インタビューの中で、説得は往々にして、メッセージが発せられる前から始まっていると説明した。
チャルディーニによれば、コミュニケーションに長けている人は、自身が提示するアイデアが極めて重要なものに感じられるように、聞き手の心的状態を調整しているのだという。
チャルディーニの研究からは、影響力の形成において、人々の「注目」が極めて重要であることが明らかになった。人は概して、その瞬間に自分の意識下で最も顕在化しているものに反応する。発言者がアイデアに人々の注意を引きつけることができれば、そのアイデアは説得力を増す。
こうした知見を考慮に入れると、会議の中で、特定の社員が他人のアイデアをわが物にするように思える理由が理解しやすくなる。要するに、アイデアを提示する時のコツは、聞き手の注意を引くようなやり方で提案することなのだ。
あなたのバージョンのアイデアを、集団の注目の的にすることができれば、たとえそれが、前にほかの誰かが示したアイデアにアレンジを加えたものだとしても、あなたは発案者として一目置かれる。
発言者の自信は、アイデアが支持されるかどうかに影響を及ぼす
アイデアの認識に影響を与えるもう一つの要因は、発言者がどれだけ自信を持って提案しているかだ。
人はしばしば、コミュニケーションにおける自信を、専門性の証拠と解釈する。アイデアを明確に、確信を持って提示すれば、聞き手が発言者を、そのテーマに精通している人物とみなす可能性は高くなる。
会議では慎重に発言する人もいるが、自信ありげにアイデアを言い直すことで、アイデアに対する集団の認識を変えることができる。自信満々に話す人が発案者と思われがちなのは、彼らのバージョンのアイデアが、より決定的なものに聞こえるからだ。
会議での発言のタイミングも、アイデアが記憶に残るかどうかの鍵を握る
タイミングもまた、議論の流れがどう記憶されるかに強い影響を与える。認知科学研究においては、「新近効果(recency effect)」と呼ばれるパターンが知られている。これは、人は通常、時系列のあとの方で提示された情報を、先に提示されたものよりも容易に思い出すという現象だ。
誰かがあなたにTo Doリストを読み上げたことを想像してみよう。あなたの記憶に残るのはきっと、最初の項目や中盤の項目ではなく、最後のいくつかだろう。
そのため、数多くのアイデアが飛び交う会議では、議論の終盤で登場したアイデアが、たとえ繰り返しであったとしても、人々の記憶に残ることになる。のちに議論を振り返った時、アイデアの発案者と認識されるのは、最初に発言した人ではなく、終盤に改めて提示した人になる可能性が高い。


