4. 同じ問いのもと、研究員からアーティストへ
その後、東大での社会連携講座は終了し、僕はこのプロジェクトに今度はアーティストとして関わることになった。
僕が参加したのは、DENSOとガラスメーカーであるAGC、三菱地所、そしてアーティスト2組がチームとなって、アートを中心とした共創を行うというプロジェクトだった。プロジェクトでは、アートイベントでの展示が想定されていた。DENSO側のメンバーは大半が東大との社会連携講座にも参加していた人たちで、僕には彼らとの1年ほどの密な共創の経験があった。
作品制作では、AGCが「空を閉じ込めたガラス」と呼んでいる分層ガラスがモチーフとして用いられることになった。これは白みがかったガラスで、光を当てるとレイリー散乱が起こり、空の青や夕焼けの色と同じ仕組みで色が生まれる、という不思議なガラスである。
AGCとの対話のなかで僕は、ガラスを用いて作られるレンズに改めて興味を持った。
色々と試してみていたところ、レンズを宙に浮かべるだけで壁などに像を投影できることに気づいた。凸レンズを宙に浮かべるだけで自然と風景の光が集光し、適切な焦点距離に壁や板を置けば、そこに像が浮かび上がるのである。
これは現代のカメラの仕組みそのままなのだが、百均で買った虫眼鏡から外したレンズを宙に掲げるだけで模様が作れる不思議さに改めて感動した。
そこで、分層ガラスと大量のガラスピースを前に作品表現を探るにあたり、僕はレンズを持ち込むことを発想した。
レンズを分層ガラスの目の前に置き、像を壁に投影することで、ガラスの内面を覗こうとした。するとそこには実に面白い模様や世界が立ち現れた。夕焼けと同じ仕組みで作られた赤色や、ガラス内部に生まれた緑の色などが入り混じり、まるで火星か何かにも見えるような、あるいは内面世界そのものにも見えるような不思議な世界観が生まれた。
分層ガラスの空のような色合いは、ガラス内部の微細構造から生まれている。その内部世界をふた通りの方法で覗き込み、僕らは赤をモチーフとした写真作品として、もう1組のアーティストらは青のインスタレーションとして内部の“みえ”をアート作品として定着させた。
そのどちらも、人の内面世界への没入やあり方を彷彿とさせる表現であり、極小世界の豊かさを考え直させもする。


