フロリダ州ネープルズとポンパノビーチ
フロリダ湾岸のネープルズは、かつて中西部の富裕層が冬を過ごす避寒地として知られていた。しかし今やその印象は過去のものだ。米国各地から買い手が流入し、落ち着いた高級感を持つこの街は、全米屈指の活況を呈する不動産市場へと様変わりしている。フォーブスによればネープルズには複数のビリオネアが居住している。2025年には、市内で最も格式の高い住所とされるゴードン・ドライブにある約6万700平方メートルの邸宅が2億2500万ドルで売却され、フロリダ州の住宅取引として過去最高額を記録した。
不動産会社ダグラス・エリマンのブリタニー・スコタックは、「パンデミックと2022年のハリケーンを経て、ネープルズでは全米からの需要と新規開発が一気に増えた」と語る。「北東部を中心に各地の買い手が、この街の静けさや魅力、穏やかな環境に引きつけられている」。
世界的な高級ブランドもこの地域に参入している。フォーシーズンズやローズウッド、リッツ・カールトンといったブランドによるレジデンスに加え、「オラナ」や「3300ガルフショア」などの高級ブティック型コンドミニアムの開発も進んでいる。
一方、州の反対側のポンパノビーチは、フォートローダーデールとボカラトンの間に位置し、同市やマイアミに代わる、より落ち着いた選択肢として存在感を高めている。Kora Architectureの創業者で建築家のソヒス・ペレラが設計した「Wポンパノビーチ・ホテル&レジデンス」や「ウォルドーフ・アストリア・レジデンス・ポンパノビーチ」などの物件が、華やかさや過密さを避けつつ高級ホテル並みのサービスを求める買い手を引きつけている。
「ポンパノビーチがセカンドハウスやサードハウスの市場として特に魅力的なのは、アクセスの良さと“日常からの逃避”のバランスが取れている点だ」とKora Architectureのペレラは述べている。
サウスカロライナ州チャールストン
米国でも最も歴史ある都市の1つチャールストンが、セカンドハウス市場として存在感を高めている。全米不動産協会(NAR)は同市を2026年の有望な住宅市場の1つに挙げた。チャールストンの魅力は、自然と歴史に根ざしたゆったりした生活様式、数百年の歴史を持つ建築、ミシュラン星付きレストラン、徒歩で暮らせる街並み、ビーチへのアクセス、充実したアートシーン、そして他では得難いコミュニティの一体感にある。ニューヨークや中西部、テキサス、ロッキー山脈以西から買い手が流入しており、その背景には街の雰囲気や魅力に加え、航空宇宙・製造業などの経済拠点としての評価が高まっていることが挙げられる。
チャールストンを拠点とする不動産会社Maison Real Estateの共同創業者メアリー・ルー・ワーツは、「この街はカルチャーや食の面で、規模以上の価値を提供している。そのため大都市から来るセカンドハウスの購入者も、食や音楽、アートの楽しみを手放さずに済むと感じている」と語る。
この街では厳格な規制によって歴史的建造物が守られており、「シングルハウス様式」やジョージアン様式、フェデラル様式、ギリシャ復興様式、ビクトリア様式など、多様な建築様式が見られる。チャールストンの住宅の多くは築200年以上で、現在の買い手はこうした物件にプレミアム価格を支払っている。実際、築225年の邸宅が最近2100万ドルで売却され、市内の過去最高額を記録した。
低地に位置するチャールストンは、洪水や暴風のリスクが指摘されているが、それでも富裕層の需要は衰えていない。買い手は建築家やエンジニアの知見を活用し、素材や技術のイノベーションによってこうしたリスクに対応している。
アリゾナ州スコッツデール
砂漠での暮らしは、かつてないほど魅力的になっている。年間約300日の晴天や最高峰のゴルフ環境、プライベートジェットの利便性、高級ウェルネスやダイニングの充実した環境を背景に、スコッツデールは長年セカンドハウスの目的地として選ばれてきた。アリゾナ州には相続税や遺産税がなく、固定資産税も低いことが、その魅力を一段と高めている。
こうした需要を加速させているのが、新たな富の流入だ。スコッツデールを含むフェニックス北部で進む165億ドル規模のTSMCの投資は、この地域を世界的な半導体産業の拠点へと変えつつある。数千人規模の高賃金の雇用を生み出すとともに、市内のゲーテッドコミュニティにおけるエグゼクティブ向け住宅の需要を押し上げている。Henley & Partnersによると、スコッツデールは過去10年でミリオネア人口が125%増加し、北米でも最も急速に富が集積する地域の1つとなっている。
不動産会社コンパスによれば、現地の1000万ドル超の不動産取引は2024年から2025年にかけて30%増加した。また、最高水準の設備やすぐに入居できる超高級コンドミニアムの開発は、一次・二次住宅の購入者の双方から注目を集めている。その例としては、The Phoenician内の「Ascent」にあるオルソン・クンディグ設計の「サミット」、パラダイスバレーの「リッツ・カールトン・レジデンス」、そして「アイコン・アット・シルバーリーフ」などが挙げられる。


