経営・戦略

2026.04.29 15:15

TVショッピング依然大人気、時速1億円の爆売れも。「在庫残り100個!」の内幕

通販番組に出演した際の筆者。「料理家おすすめキッチングッズ」を紹介

芸術的タイミング、カリスマキャストのあいづち

さて、冒頭のとおり、私は10年ほど前に3年間「料理家おすすめキッチングッズ」を紹介するゲストとして何社かの通販番組に出演しました。

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料理家としてゲスト出演した私のミッションは、キッチン用のザルとバットの紹介。一見どこにでもある道具ですが、その使い勝手の良さを1時間語り尽くす現場で、私はある「カリスマキャスト」の仕事ぶりに衝撃を受けたことがあります。

彼女の役回りは、ゲストである私の「相方」。その仕事には一切の妥協がありませんでした。カメラワークから商品の見せ方、言葉選びに至るまで完璧なのです。さらに驚かされたのは、彼女が初対面からわずか1時間という極限の短時間で、ゲストである私の懐に滑り込み、心を掌握してしまったこと。

私が語るザルとバットへのこだわりに対し、まるで自身が長年、さまざまなザルとバットで苦労してきたかのような熱量で、「そう!そこなんです!」「こういうのは今までなかったですよね!」と身を乗り出し、言葉を増幅させて返してくる。その完璧なタイミングのあいづちに、私はいつしか「この人は私の良き理解者だ」と錯覚し、陶酔させられていました。

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しかし今振り返れば、あの心地よい空気感も、番組を完璧に仕上げるための細やかなプロの配慮と、一瞬の尺を一秒も無駄にしないための彼女の計算だったのかもしれません。

入れ替わりの激しい通販番組の世界には、常に目に見える結果が求められ、一歩先もわからない厳しさがあります。あの「共感の嵐」は単なる優しさというより、限られた時間の中で結果を出し続けなければならないプロとしての、一歩も引けない矜持のようなものだったのかもしれません。

その日、目標を大きく上回る予算を達成した瞬間、私はカリスマが「カリスマ」であり続ける理由を思い知らされました。それは、あらゆる振る舞いを数字へと昇華させる洗練された技術と、「売り続けること」の重圧を力に変えて生き残る、プロフェッショナルの凄まじい意地が成せる技だったのです。

テレビ全盛の終焉で「オワコン」、否、変化に強い「令和の買い物選択肢」?

20〜30年前はテレビ全盛期で、遅い帰宅後や、夜更かししながら観続けてしまう深夜帯、午前0時以降に番組で紹介している商品がよく売れると言われていましたが、顧客の高齢化により最近では朝方に変化しています。

また現代人のテレビ離れは業界に大きく影響しているといえます。そのため、各番組のネット注文サイトも充実しており、サイトから商品の生放送の映像が配信で閲覧ができたり、全時間帯の商品を一度に購入も可能です。また生配信アプリを使い、人気のキャストがアプリから販売するという現代に合わせた工夫を凝らした企業もあります。

「ネットより人からおすすめ商品を聞きたい派」「自由な時間にポチッと買い物をしたい派」の両者への対応力が売れ続ける番組作りの秘訣ではないでしょうか。

時代が変われど長く愛され続ける理由、それはこの柔軟さと、随所に現れるプロそれぞれの、丁寧な仕事と真摯に向き合う姿勢が大きく影響しているといえるでしょう。

坂口優子(さかぐち・ゆうこ)◎料理家。東京、大阪の2拠点で料理教室を開催するほか、企業向け社食弁当の提案・提供、レシピ開発も。雑誌、メディア出演多数。

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