変化だけが唯一の常である世界では、適応できることこそが生き残る唯一の方法だ。しかし、押し寄せる変化をただ耐え抜くだけでは、もはや十分ではない。
有効なリーダーは、正式な管理職の地位にあるかどうかにかかわらず、変化への備えを「生存」から一段引き上げる。変化をただ生き延びるのではなく、その只中で導く。だがDDIのグローバル・リーダーシップ・フォーキャストによれば、「変化を導く」スキルはますます希少になりつつある。
現在、変化をマネジメントする準備ができていると感じるリーダーは13%にすぎない。過去5年間で25%から低下した。
皮肉にも、最も上位のポジションにいるリーダーほど、変化を導く点でのスコアが低い傾向がある。強い変革リーダーシップを示す経営幹部はわずか8%だ。DDIは、変化を促す行動を評価できる人は1%にとどまり、抵抗への対処に強い人も11%にすぎないと指摘している。
新任リーダーや現場リーダーでは、変化の促進に強い人は15%にとどまり、39%は大幅な能力開発を要する。
中間管理職が最も良好で、変化を導くことに強い人は30%だ。それでも3人に1人にすぎず、4人に1人は大幅な能力開発を必要としている。
DDIの分析・行動研究センターでシニア・リサーチ・マネジャーを務めるロージー・ライン氏は、「リーダーシップに求められるものが、変化に備えるための育成のあり方を上回ってしまっている」と語る。「当社の調査では一貫して、変革リーダーシップは行動レベルで崩れている。リーダーは、なぜ変化が必要なのかを説明すること、他者を巻き込んで形にしていくこと、抵抗に対処すること、新しい働き方を定着させることに苦戦している」
環境が変化し続けるなか、変化の只中で効果的に導く力は、組織もリーダーも従業員も、見過ごすことのできないスキルである。その理由を見ていこう。
なぜ変化に関するスキルは低下しているのか
なぜ変化関連のスキルは急落しているのか。ライン氏はこう語る。「パンデミック以降、リーダーはほぼ途切れない混乱のなかで仕事をしてきた。期待は高まり、不確実性は増し、成果を出して調整するための時間はかつてないほど減っている」
さらに、ここ数年で変化のペースが加速し、リーダーに降りかかる変更は増える一方で、使えるリソースは減っているようだ。加えて、従業員の信頼は歴史的に低下している。ガートナーは、従業員の79%が組織の変化に対する信頼が低いと報告している。
ライン氏は、リーダー職の役割範囲も拡大したと考えている。「いまリーダーには、結果を出すだけでなく、従業員のウェルビーイングを支え、エンゲージメントを維持し、人材を育成し、チームを継続的な変化へ導くことが求められている」と彼女は言う。
最良の状況でさえ、これは大きな負担だ。結果として、リーダーは変化への準備が整ったマインドセットではなく、生き延びるためのモードに追い込まれてしまう。
チェンジマネジメント≠変化を導くこと
チェンジマネジメントと「変化の只中で導くこと」はしばしば同義に扱われるが、本質的に異なる。
ライン氏は言う。「チェンジマネジメントは、変化のメカニクスに焦点を当てる。変化をどのように計画し、構造化し、実行するかを扱う。そこには、タイムライン、プロセス、全員が同じ理解に立つためのコミュニケーション計画が含まれる。
これらは変化を適用するうえで必要だが、それだけでは不十分だ」
チェンジマネジメントが扱わないのは、人の要素である。ライン氏は「変化を導くことはさらに踏み込み、人々が混乱をどう経験するのか、リーダーがそれを通じてどう成果を出すのかを扱う」と説明する。
「有効なリーダーは方向性を示し、目的を強化し、障害を取り除き、新しい働き方を促し、制度や文化全体にわたって勢いを維持する。彼らはエンゲージメントだけでなく、行動を動員し、変化の最中に事業成果を出すことにも責任を負う」
変化する状況のなかで成長するには、リーダーはロジスティクスのスキルと人とのつながりを両立させなければならない。
変化への準備ができている状態とは
組織が変化で問題に直面すると、戦略に欠陥があったのだと考えられがちだ。しかしライン氏は、本当の失敗はたいてい人の側にあるとみている。「変化はしばしば、信頼、理解、コミットメントが築かれる人と人のやり取りのなかで失敗する」と彼女は言う。「絶えず揺れ動く状況で有効に動けるリーダーは、変革が人々と、彼らの変化体験を通じて起こることを理解している」
ライン氏によれば、変化に備えたリーダーの主要なスキルと行動は次の通りだ。
- 賛同を形成する。ライン氏はこれを、チーム全体でコミットメントを築きながら、変革施策を前に進めることだと定義する。
- 信頼と心理的安全性を保つ。「これにより、チームメンバーは質問し、試し、懸念を提起することに安心感を持てる。プロセス全体を通じて理由と指針を共有することも含まれる」と彼女は言う。
- 戦略と人のバランスを取る。「変化に備えたリーダーは、チームの差し迫った感情的ニーズと、組織の戦略的方向性を天秤にかけられる」とライン氏は言う。
変化に備えたZ世代のリーダー
DDIのデータによれば、Z世代は変化を導くことへの自信がより高いと報告している。ライン氏は、その理由は、彼らがほぼ絶え間ない混乱の環境のなかでプロフェッショナルとして成長してきたからだと考えている。「当社の調査によれば、Z世代のリーダーは急激な変化を予測し対応する準備ができていると感じる確率が1.5倍高い」と彼女は言う。
ただし彼女は、自信を準備ができていることと混同すべきではないと注意を促す。「Z世代のリーダーは継続的な変化に慣れているが、それが自動的に大規模な変革を導く準備ができていることを意味するわけではない」とライン氏は言う。「育成がなければ、変化の複雑性が増したときに、初期の自信は損なわれうる」
Z世代の変化への開放性を維持し強めるには、組織が文化と育成を、この世代が重視するものに整合させる必要があるとライン氏は述べる。それは、継続的な学習、柔軟性、信頼、そして意義ある支援である。「正式なリーダー職にあるかどうかにかかわらず、新たに台頭するリーダーが他者を変化へ導く準備を整えるには、狙いを定めた実践、フィードバック、コーチングが不可欠だ」と彼女は言う。
セルフリーダーシップ
この数字が示す通りであれば、今日の多くの従業員は、変化の只中で効果的に導く備えができていないリーダーのもとで、何らかの組織変化を経験することになる。そうしたときに重要になるのがセルフリーダーシップである。
ライン氏は言う。「正式なリーダーシップが欠けていても、従業員は、効果的な変革リーダーシップを可能にするのと同じ能力を示すことで、自らを導ける。すなわち、新しいアイデアへの開放性、変革施策への能動的な関与、同僚に対して変化とイノベーションの必要性を強化することだ」
「従業員は、より多くの指針が必要なときには質問することもできる。質問し、目標を明確にし、制約を特定することが、不確実性があっても仕事を継続させる助けになる」
セルフリーダーシップが生む波及効果は大きい。「従業員が戦略に関する未解決の問いを表面化させれば、リーダーはそれを上位層へエスカレーションし、より広いチームが明確さを得られるようにできる」とライン氏は言う。
「変化の時代において、進歩は、完璧な条件が整うのを待つのではなく、個々人が関与し、適応し、前進することを選ぶかどうかにかかっている」
なぜ変化への備えが重要なのか
組織が育成を軽視すれば、特に変化が持続する局面では現実的なリスクに直面する。「ハイポテンシャル人材は、正式な育成機会がない場合、離職する可能性が3.7倍高い」とライン氏は警鐘を鳴らす。「それは育成が福利厚生ではなく、戦略的なレバーであることを意味する」
組織も個人も、変化に備えたスキルの開発ニーズを無視できない。組織は最も必要な瞬間にトップ人材を失うリスクを抱え、従業員は適応力が欠けているというだけでキャリアの歩みが鈍る危険に直面する。
ライン氏はこう締めくくる。「リーダー育成を競争優位として扱う組織は、戦略を実行し目標を達成するうえでより有利な立場に立てる。最も重要な局面で変化を導ける適切な人材が整っているからだ」



