それぞれが個性や目標、個人的な事情や好みを持つ従業員で構成された会社を率いることは、ときに不可能に思える。全員が満足し、支えられ、生産的でいられるようにするにはどうすればよいのか。それを実現できたとして、その前向きな勢いをどう維持するのか。
そして、もしズレが生じたとき、どうすれば自信を持って企業文化を改善できるのか。
これらの問いにはそれぞれシンプルな答えがあるが、正しく実践するのは簡単ではない。従業員の声に耳を傾けることだ。
従業員の声を本当に聴き、その考えやフィードバック、意見に対して前向きで、目に見え、持続可能な形で行動することで、組織は「その一員でいたい」と人々が感じる文化を築ける。
では、どうすればよいのか。
従業員の声を聴く施策にある従来のギャップ
従業員のフィードバックを集めること自体は新しい概念ではない。しかし、多くの組織は次のステップでつまずく。集めたフィードバックをどう扱うのか。それを、企業文化やエンゲージメント戦略、福利厚生の設計の改善にどう生かすのか。
問題はフィードバックを集めることではない。従業員の心に響く実行可能なアクションへと翻訳することにある。
ギャップを埋める
リーダーが意図的に従業員のフィードバックを放置しているとは思わない。問題は、そのフィードバックに基づく変化を、持続可能で予算に配慮し、かつ目に見える形で効果的に実行する方法がわからないことにある。
組織の75%が四半期ごとにフィードバックを収集している一方で、継続的に「聴くこと」と「行動」を回すループを構築できているのは15%にとどまり、現在のリスニングプログラムが望ましい事業成果の達成に役立つと確信しているのは25%に過ぎない。
継続的に聴き、行動し、改善する文化をつくることは難しい。組織が成長し、新たな人材が加わり、期待値が変わっていくほど、なおさらだ。私たち自身も、従業員が自律的で、エンゲージされ、当事者意識を持てる文化を築く過程で、成長痛を経験してきた。
しかし年月を通じて、どの組織でも従業員の意見を聴き、行動へ移す際に役立つと私が考えるいくつかの戦略を見いだしてきた。
1. サーベイを作り込む
実行可能なフィードバックを得るには、よく考え抜かれ、意図を持って設計されたサーベイが必要だ。選べるサーベイの種類は多い。包括的なエンゲージメントサーベイ、短いパルスサーベイ、オンボーディングサーベイなどだ。種類にかかわらず、次のベストプラクティスに従いたい。
• サーベイの長さを適切に抑える(例:パルスサーベイは2〜5問、エンゲージメントサーベイは30〜50問)
• テーマを1つか2つに絞る(企業文化、リーダーシップ、福利厚生、整合性など)
• 明確なデータを得るためにリッカート尺度を用いる
• 自由記述の設問をいくつか入れ、個別のフィードバックを得る
• 年1回以上、従業員にサーベイを行う
• フィードバックが完全に匿名であることを担保する
2. 回答データをセグメントし、トレンドを特定する
職場でエンゲージされている従業員が30%しかいないと知るだけでは不十分だ。営業部門は90%がエンゲージされている一方で、小売拠点の従業員は15%しかエンゲージされていないかもしれない。
意味のあるトレンドを見つけるには、サーベイ対象の従業員を関連するグループに分解する必要がある。例えば、次のような軸で回答をセグメント化する。
• 在籍期間
• マネジメントレベル
• 部門またはチーム
• 地域または勤務地
• 性別
• 年齢
データのセグメント方法は、サーベイの目的にできるだけ合致させるべきだ。そうすることで、次の点が明確になる。
• ポジティブなトレンドとネガティブなトレンドの双方
• どの拠点、部門、あるいはチームが、企業文化のどの側面で苦戦しているのか
こうして深掘りすれば、現実の課題を何も解決しない包括的な万能策を探すのではなく、問題の核心に対処する変化を実装できる。
3. 改善の焦点を絞り込む
仕事のあらゆる側面で全従業員を満足させることは不可能だ。代わりに、(正確にセグメント化されたデータに基づいて)最も広範に見られるトレンドを1つか2つに絞り、その領域を改善する方法をブレインストーミングする。
例えば、従業員の大部分が「現在の役割の中で成長する手段がない」と感じていると報告しているかもしれない。そのトレンドを特定したら、サーベイに挙がった特典の改善、オフィス改装、職位の整備など、あれこれに手を広げるのではなく、プロフェッショナル・ディベロップメント戦略の再構築に6カ月間集中して取り組む。
4. こまめにコミュニケーションを取る
参加してくれた従業員に感謝を伝え、見えてきたトレンドの一部を共有する。この情報を認めることで、たとえ従業員が望む改善をすべて実現できないとしても、「本当に聴いていた」と示せる。
どのトレンドが最も多く見られたのか、そして改善に向けた計画を伝える。先の例でいえば、LinkedIn Learningのコース提供、メンターシッププログラム、継続教育の費用補助といった、プロフェッショナル・ディベロップメントを強化する初期案を紹介できる。
特定のチームや部門が直面している課題については、各チームのリーダーと会い、掘り起こされた問題に対処する戦略を一緒に考えるのが望ましい。
5. フォローアップする
サーベイは1回では足りない。最初のサーベイに基づいて改善を実施したら、同様の質問を投げかける2回目のサーベイを計画する。例えば、次のようにだ。
• 6カ月前、従業員のフィードバックを受けてプロフェッショナル・ディベロップメント戦略を改善した。私たちが行った変更を把握しているか。
• 現在、成長機会が増えたと感じるか。
• 自身のプロフェッショナル・ディベロップメントに関して、ほかに見たいものは何か。
こうした問いかけにより、コミュニケーションのギャップ、改善戦略の失敗、そして従業員の感情の継続的な評価を明らかにできる。
従業員エンゲージメントの鍵は、本当に聴くことにある
従業員の声を聴くことは、成熟し、長く続き、成功する会社をつくるための鍵の1つである。従業員のフィードバックを集め、効果的に行動へ移すことで、従業員の本当の欲求やニーズを満たす文化を築けるだけでなく、「私たちの声を聴いている」と示すことにもなる。それが信頼を生み、その信頼がパフォーマンスを高め、創造性を促し、エンゲージメントを動かし、イノベーションを育む。



