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2026.03.19 08:36

サイバー犯罪から資産を守る「盾」の正

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先月、ランサムウェア攻撃によりミシシッピ州の病院が閉鎖を余儀なくされ、多くの患者の治療が中断された。3時間かけて車を走らせてきた男性が、攻撃のせいで化学療法が中止になったことを知ったという記事を読んだとき、私は怒りに震えた。一体誰がこんなことをするのか。金のために病院を機能停止に追い込むとは、どんな人間なのか。

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そこでふと思い当たった。ジョーカーだ。映画『ダークナイト』の壮大なシーンで、ヒース・レジャー演じるジョーカーはゴッサム総合病院を爆破する。病院を攻撃できるのはそういう存在、すなわちスーパーヴィランだ。金銭目的で病院にランサムウェアを仕掛ける連中は、コミックの悪役が現実世界に飛び出してきたようなものである。

残念ながら、こうした悪役たちは消えることなく、その邪悪な計画は病院だけにとどまらない。大規模な組織に限った話でもない。むしろ、サイバーセキュリティの世界で「脅威アクター」と呼ばれるこれらの犯罪者たちは、あらゆる場所で金を稼ぐ機会を狙っている──私たちの個人口座や資産も例外ではない。

私はこれまでのコラムで、こうした脅威アクターが高度化していることを書いてきた。彼らは攻撃の実行に人工知能(AI)を取り入れ、驚くほど本物らしいテキスト、音声、さらには動画メッセージまで作って、人々にリンクをクリックさせ、犯罪者にシステムへのアクセス権を与えさせる。近年では、バットマンやスーパーマンに対して悪党が連合する登場人物の一団を思わせるコミュニティへと変貌し、標的の特定、侵入手段の獲得、ランサムウェアによる要求の実行といった犯罪プロセスの各パートを、それぞれの役者が専門化して担っている。

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また私は、サイバーセキュリティの専門家がこうした犯罪者と戦い、私たちのシステム、データ、資産を守るために講じてきた、ほとんど超人的な取り組みについても書いてきた。サイバーセキュリティ業界は、悪党と戦うための独自のAI兵器に数十億ドルを投じている。

キャプテン・アメリカの盾

この戦いが激化するなか、企業も個人も、スーパーマンがメトロポリス上空でゾッドと戦い、街区を破壊しビルを倒壊させたときに路上で巻き込まれた哀れな通行人のような気分になりがちだ。

スーパーヒーローと悪党が私たちの頭上で覇権を争うなか、個人と企業は直接の攻撃からも、巻き添えの被害からも、自分たちと自分たちの資産を守る必要がある。心配はいらない。私たちは無力なまま取り残されるわけではない。まさに間一髪で登場するのは──鳥だ! 飛行機だ! いや……デジタルウォレットだ。

資産が現金や金のように物理的なものだった時代には、物理的な防御が必要だった。だからこそヒーローは筋骨隆々で、BAM!、WHACK!、KAPOW! と悪党を物理的に叩きのめせた。そしてスーパーマンが銃弾を受け付けないように、物理的な防御も備えていた。

現在の投資資産の大半は、依然として何らかの物理的な証書で表され、銀行や証券会社が顧客のために安全に保管している。簡単に言えば、こうした受託者(フィデューシャリー)が資産を安全に保管し、配当金の受け取り、株式分割、株主投票といったカストディ資産の管理業務を行っている。

しかし、そう遠くない将来、投資資産はトークン化される。すなわち株式、債券、その他の資産がブロックチェーン上のトークンへと変換されるのだ。実際、ブロードリッジの最新調査に参加した大手金融サービス企業の半数以上(54%)が、トークン化およびデジタル資産インフラに中規模から大規模な投資を行っている。

ウェルスマネジメント、アセットマネジメント、資本市場のリーダーたちがなぜこれほどのリソースを投じているのか。それは、トークン化資産の取引がより速く、より安く、よりリスクが低いからだ。こうした取引は即座に決済され、トークン化資産には管理のためのカストディアンが不要になる。代わりに、トークンに組み込まれたスマートコントラクトが、配当の分配やコーポレートアクションの執行といった機能を自動化する。

トークン化の世界では、デジタルウォレットが秘密鍵、すなわちトークンの所有権を証明する暗号コードを生成・管理する。これらの資産を移転できる唯一の方法は、この鍵を用いて取引を承認することだ。秘密鍵はさらに、暗号化で保護したり、セキュアチップやその他のハードウェアに保存したりでき、場合によってはインターネットから完全に切り離された状態で保管される。

多くの投資家にとって、ウォレットは銀行や証券会社から提供され、鍵と保管を代行してもらうことになる。これが新しい形態のカストディとなる。このモデルでは、マルチシグ(複数署名)方式が採用され、異なる人物やシステムが安全に保有する複数の秘密鍵を使用しなければ取引を承認できない仕組みとなる。

こうしたイノベーションにより、デジタルウォレットは資産の取引をより容易にすると同時に、盗難をより困難にする。病院を閉鎖に追い込み、企業システムに侵入し、個人の銀行口座から金を盗む悪質な脅威アクターが跋扈する世界において、これはまさに私たち一人ひとりが手にするスーパーパワーのようなものである。

forbes.com 原文

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